ecforce AIに新ツール追加。集計もレポートも「チャットで頼む」時代へ
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「あの集計、あの人しかできないんですよ」
この一言を、これまで何度も耳にしてきました。売上のレポートづくり、在庫の推移表、広告の効果まとめ。会社の中で一人だけExcelに強い人がいて、その人が休むと数字が止まる。規模の大小を問わず、多くの現場で起きていることです。
2026年7月24日、SUPER STUDIOがECプラットフォーム「ecforce」のAIエージェント「ecforce AI」に2つの新しいツールを追加したと発表しました。この発表は、まさに冒頭の「あの人しかできない」という状態に向けられたものです。
この記事では、特定のサービスの機能紹介にとどまらず、「チャットで頼めば作業が終わる」という変化が私たちの仕事にどう関わってくるのかを整理していきます。ecforceをお使いでない方にも参考になるように書いていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
何が追加されたのか、平たく説明します
追加されたのは「コード実行ツール」と「キャンバスツール」の2つです。名前は難しそうですが、やっていることはシンプルです。
「コード実行ツール」は、チャットで指示するだけで必要な処理を組み立てて実行し、成果物を返してくれる機能です。できることとして挙げられているのは、簡単な業務ツールやシミュレーターの作成、レポートやダッシュボードの生成、データの集計やクロス集計、表記のばらつきを整える作業、重複したデータの名寄せ、需要予測、統計分析。さらにCSVやExcel、PDF、画像などファイル形式の変換にも対応します。
「キャンバスツール」のほうは、AIの回答を文章の羅列で終わらせず、レポートや比較表、グラフといった見やすい形で表示する機能です。「キャンバスでまとめて」「並べて比較して」と伝えると、画面の横に整理された形で出てくる、というイメージです。
ポイントは、この2つがどちらも「プログラミングの知識がいらない」ことです。専門用語で言えば大きな技術的進歩なのですが、使う側からすると「日本語でお願いすれば形になって返ってくる」という、それだけの話です。
Before→After:3日かかっていた仕事の行き先
変化を具体的に想像してみましょう。
これまでは、こうでした。上司から「先月の売れ筋を、カテゴリ別と年代別のクロスで見たい」と頼まれる。管理画面からデータを書き出し、Excelに貼り、ピボットテーブルを組み、グラフを整え、体裁を直す。慣れた人でも半日、慣れていなければ数日かかります。しかもその途中で「年代じゃなくてリピート回数で見たい」と言われると、また最初からやり直しです。
これからは、チャットに「先月の売れ筋をカテゴリ別とリピート回数別のクロスで、グラフ付きで出して」と書くだけになります。条件を変えたければ、そう言い直せばいい。作り直しの手間が、ほぼゼロになります。
ここで大事なのは「時間が短くなる」ことよりも、「試す回数が増える」ことです。半日かかる作業なら、切り口を試せるのは1回か2回。数分で済むなら、10通り試して比べられます。分析の質を決めるのは技術ではなく、試した回数です。ここが本当に変わる部分だと考えています。
公式が挙げている活用例を見てみます
SUPER STUDIOが具体例として示しているのは、大きく2つです。
1つは需要予測と在庫のシミュレーションです。受注データをもとに、今後の受注数や在庫の推移を予測し、結果をグラフで見えるようにする。発注のタイミングや量を決める判断材料に使えます。在庫を切らして販売機会を失う、あるいは抱えすぎて資金が寝る、というのはネットショップの永遠の悩みですから、ここに手が届くのは実務的です。
もう1つはマーケティング用途です。訴求の切り口が違うランディングページのファーストビュー案を複数つくり、横に並べて比較しながら検討する。これまでデザイナーに何案も依頼していた工程の、たたき台づくりの部分をAIが担う形になります。
同社は、EC事業では事業者ごとに必要な業務が多様化している一方、それを実現するにはプログラミングの知識や手作業が必要で、一部の担当者への依存が課題になっていたと説明しています。狙いは属人化の解消と、対応スピードの改善です。この課題設定は、多くのEC現場の実感と重なるのではないでしょうか。
これは「ecforceの話」で終わりません
ここからは、ecforceをお使いでない方に向けた話です。
実は今、ECプラットフォーム各社が同じ方向に進んでいます。GMOペパボのカラーミーショップはAIエージェント機能やリモートMCPサーバーを提供し、ShopifyもAI関連機能を継続的に追加しています。楽天市場も対話型の接客AIを育てています。つまり「管理画面にAIが常駐して、話しかけると仕事をする」という形は、業界全体の共通の答えになりつつあります。
ということは、いまお使いのプラットフォームやカートにも、遠くない将来に似た機能が乗ってくる可能性が高いということです。今回のニュースは「他社の話」ではなく、「自分の管理画面の近い未来」として読むのが正解だと考えています。
そして、その時に差がつくのは機能の有無ではありません。業界で言われているのは「自社のデータにどれだけ深く繋がっているか」です。どんなに賢いAIでも、参照できるデータが整っていなければ答えは出せません。ここが次の話につながります。
AIに任せられる店と、任せられない店の分かれ目
AIが管理画面に来たとき、すぐに恩恵を受けられる店と、そうでない店が出てきます。違いは技術力ではなく、データの整い方です。
たとえば、同じ商品なのに登録名が「Tシャツ(白)」「Tシャツ ホワイト」「白Tシャツ」とばらついている。カテゴリの付け方に一貫したルールがなく、担当者ごとに違う。商品の属性欄が空のまま放置されている。こうした状態だと、AIに「カテゴリ別に集計して」と頼んでも、そもそも正しい答えが返りません。
今回追加された機能に「データクレンジング」「名寄せ」が含まれているのは象徴的です。AIが最初に手をつけるべき仕事が、賢い分析ではなく「散らかったデータの整理」だと、提供側が認識しているということです。
裏を返せば、いま特別なツールを持っていない事業者でも、商品登録のルールを揃えておくだけで、AIが来たときのスタートラインで前に出られます。地味ですが、確実に効く準備です。
AI検索との関係:整えたデータは集客にも効きます
私たち福岡ECサイト株式会社は、AI検索への対策を強みとして掲げています。今回の話は、実はそこと深くつながっています。
いま検索の世界では、AIが答えを直接組み立てて見せる形が広がっています。この時、AIが根拠にできるのは「文章として、はっきり書かれている情報」です。サイズ、素材、対応条件、送料のルール。これらが商品ページに文章で存在しているかどうかで、AIの答えに登場できるかが変わってきます。
つまり、社内の分析をAIに任せるために商品データを整える作業と、AI検索に選ばれるためにページの情報を整える作業は、ほとんど同じ内容なのです。「社内向けの整理」と「集客向けの整理」を別物として考える必要はありません。一度整えれば、両方に効きます。
時間が短縮されれば商品ページの更新頻度が上がり、更新頻度が上がれば検索やAI経由で見つけてもらう機会が増え、結果として売上につながるかもしれません。もちろんそう単純に進む保証はありませんが、投資先としての筋は通っています。
立場別に、今週できること
個人で発信されている方は、ご自身が普段使っているツールに「AIに聞く」ボタンがないか探してみてください。すでに入っているのに気づいていない、というケースが少なくありません。あれば、まず「今月の数字をまとめて」と話しかけてみるのが手っ取り早い入り口です。
Webサイトを運営されている方は、社内で「この作業はあの人しかできない」という状態になっているものを、3つ書き出してみてください。それが今後AIに置き換わる候補です。書き出すだけでも、優先順位が見えてきます。
ネットショップを運営されている方は、商品登録の表記ルールを見直すことをおすすめします。カラー名、サイズ表記、カテゴリの付け方。いま揃えておけば、AI機能が来たときに何もせず恩恵を受けられます。逆に揃っていないと、便利になるはずのタイミングで整理作業に追われることになります。
これから出店を考えている方は、プラットフォームを選ぶ基準に「AI機能がどのデータと繋がっているか」を加えてみてください。機能一覧に並んでいるかどうかより、受注・在庫・広告といった実データと一体で動くかどうかが実用性を左右します。
編集部としての考察
今回の発表を見て、編集部として感じたのは「AIが詳しい人向けの道具から抜け出した」ということです。
これまでAIを業務に組み込むには、プロンプトを工夫する力や、出力を検証する知識が必要でした。だからこそ「AIに詳しい担当者」という新しい属人化が生まれていた面もあります。今回のように「日本語で頼めば形になって返ってくる」設計が標準になれば、その属人化も薄れていきます。
ただし、忘れてはいけないことがあります。AIが速く答えを出すようになるほど、「何を聞くべきか」を決める力の差が結果に出るようになります。集計作業ができる人が偉い時代は終わりますが、代わりに「どの数字を見れば判断できるのか」を分かっている人の価値が上がります。
作業から自由になった時間で、何を考えるか。そこが問われる局面に入ったと見ています。
まとめ
ecforce AIに追加された2つのツールは、レポートづくりや需要予測を「チャットで頼む」形に変えるものです。そしてこの流れは、ECプラットフォーム業界全体の共通の方向でもあります。いまお使いの管理画面にも、いずれ似た機能が乗ってくると考えて差し支えありません。
その時に前に出られるかどうかを決めるのは、ツールの契約ではなく、自社データの整い方です。商品名の表記を揃える。カテゴリのルールを決める。空欄の属性を埋める。どれも今日から着手でき、費用もかかりません。
便利な機能が来るのを待っている店と、来た瞬間に走り出せる店の差は、この地味な準備でつきます。管理画面を開いて、商品リストを上から10件だけ見てください。揃っていない箇所が、そのまま最初の課題です。



