Amazonが「エージェントポリシー」を新設。10月28日からAI学習が禁止に、自動化ツールのルールも厳しくなります

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ご自身が撮った写真や書いた文章が、知らないうちにAIの勉強材料になっていた——そんな話を耳にして、少しモヤッとしたことはないでしょうか。

悪用されたわけでもなく、誰かに迷惑をかけられたわけでもありません。でも「せめて一言聞いてほしかった」という感覚は残ります。自分が時間をかけて作ったものが、自分の知らないところで、誰かの商売の材料になっている。理屈より先に、感情のほうが反応する話です。

この感覚を、いま世界中の会社が抱えています。そして大きな会社は、それをはっきりルールにし始めました。

2026年8月5日、アマゾンジャパンが出品者向けの契約を更新し、新たに「エージェントポリシー」を追加すると報じられました。適用は2026年10月28日付です。内容は大きく2つあります。Amazon上のデータをAIの学習やモデルの改善に使うことを禁止すること。そして自動化ツールに対して、識別情報の開示などを求めることです。

Amazonで販売していない方には関係のない話に見えるかもしれません。ですがこのニュースには、ネット上で何かを売ったり発信したりしている全員に関わる論点が含まれています。順を追って見ていきましょう。

何が決まったのか、シンプルに整理します

まず1点目です。Amazon上のデータをAIに学習させることが禁止されます。ここでいうデータとは、Amazon上に存在する情報全般を指すと考えられます。

これまで、こうした行為は「明確に禁止とは書かれていない」というあいまいな領域にありました。あいまいだったからこそ、いろいろなツールやサービスが生まれ、使われてもきました。それが10月28日以降、はっきり線を引かれる形になります。

2点目は、自動化ツールへの識別情報の開示です。「このツールは誰が作った、何をするツールなのか」を明らかにせよ、という要求だと理解できます。名乗らずに動き回るツールは認めない、ということです。

この2点をまとめると、Amazonが言っていることはこうなります。「AIを使うのは構いません。ただし、うちのデータを持ち出して自分の資産にするのはやめてください。そして、正体を明かして入ってきてください」。

なぜ、いまこのルールが必要になったのでしょうか

ここで少し前の話とつながります。いまECの世界では、AIが人間の代わりに買い物をする「エージェンティックコマース」に向けた動きが加速しています。国内でも、ECサイト構築大手がAI経由の注文に対応した基盤づくりを進めると発表したばかりです。

AIが買いに来る世界とは、言い換えれば正体のわからない訪問者が大量に出入りする世界です。人間のお客さまなら、ブラウザで開いて、迷って、買っていきます。AIは秒単位で何千ページも読み、条件を抜き出し、去っていきます。

その中には、本当に買う気のあるAIもいれば、情報を集めて持ち帰るだけのAIもいます。プラットフォームの立場から見れば、後者は「自社が長年かけて蓄積した資産を、無料で持ち出されている」ことになります。

つまりAmazonの今回の対応は、AI活用に後ろ向きになったという話ではありません。AIに門戸を開くからこそ、門番を置いたという話です。開放と管理は、同時に進むのが自然です。

Before → After:出品されている方の実務はこう変わります

これまで(Before)。便利そうなツールを見つけたら、まず使ってみる。競合の価格を自動で取ってくるツール、レビューをまとめて分析してくれるサービス、商品説明文を大量に生成してくれるツール。どれも「規約に書いていないから、たぶん大丈夫だろう」という感覚で導入されてきました。

これから(After)。同じツールが、規約違反になっている可能性があります。特に「Amazon上のデータを取り込んで、それを学習に使う」タイプのサービスは要注意です。10月28日までに、いま使っているツールが何をしているのかを確認しておく必要があります。

作業としては地味です。使っているツールを紙に書き出す。それぞれについて、提供元の説明を読む。「取得したデータをどう扱うか」の記載を探す。わからなければ提供元に問い合わせる。この4ステップです。半日もかからないはずですが、やっていない会社のほうが多いはずです。

数字にすると、どういうリスクでしょうか

ここは仮定の話としてお読みください。

もし規約違反を理由にアカウントに影響が出た場合、失うのは売上だけではありません。積み上げてきたレビュー、検索順位、リピーターとの接点、そのすべてが一度に止まります。仮に月商の3割をAmazonに依存しているお店なら、その3割が予告なく消える可能性を抱えていることになります。

逆に、確認作業にかかる時間はおそらく半日です。半日と、事業の3割。この2つを並べたとき、どちらを優先すべきかは考える必要もありません。

もちろん、ツールを使っていれば必ず問題になるという話ではありません。多くのツールは適法に運営されているはずです。ただ「確認していない」という状態そのものがリスクだ、というのが今回お伝えしたい点です。

ここがいちばん大事な話です:ルールは他人が決めています

今回のニュースから読み取るべき、いちばん重要なことをお伝えします。

Amazonであれ楽天であれ、他社のプラットフォーム上で商売をしている限り、ルールを決めるのは自分ではありません。今回のように、ある日「10月28日からこうします」と通知が来ます。そして事業者はそれに従うしかありません。交渉の余地はほとんどありません。

これは理不尽だという話ではなく、構造の話です。場所を貸してもらっている以上、場所のルールは貸主が決めます。当たり前のことです。

問題は、その場所しか持っていない場合です。手数料が上がっても、規約が変わっても、表示の仕様が変わっても、受け入れるほかありません。

だからこそ、自社サイトという「ルールを自分で決められる場所」を持っておく意味があります。自社サイトなら、どんな情報を載せるかも、どうお客さまと関係をつくるかも、自分で決められます。誰かの通知一枚でひっくり返ることがありません。

AI検索の時代に、自社サイトの価値は上がっています

「でも、自社サイトを作ったって人が来ないでしょう」と思われるかもしれません。数年前までは、その懸念は正しかったと思います。モールには集客力があり、自社サイトにはありませんでした。

ただ、AI検索が広がってきたことで、この前提が動き始めています。AIが答えを組み立てるとき、参照するのはモールの商品ページだけではありません。専門的に、具体的に、深く書かれた情報が置かれている場所を探します。

モールの商品ページは、フォーマットが決まっているぶん、書ける内容にも限りがあります。一方で自社サイトなら、その商品がどう作られているのか、誰のために作ったのか、どう使うのがいいのかを、好きなだけ書けます。AIに読ませる材料の量と質で、自社サイトはモールを上回れるのです。

当社がAI検索対策に力を入れているのは、まさにここです。AIに選ばれるための材料を置ける場所を自分で持っているかどうかが、これからの差になると考えています。

立場別に、何をすればよいでしょうか

個人で発信をされている方へ。使っているサービスの規約が変わったという通知を、開かずに閉じていませんか。全部を読む必要はありませんが、「データの扱い」に関する部分だけは目を通す習慣をつけておくと安心です。あわせて、自分の発信の本体をどこか一箇所に集めておくことをおすすめします。

Webサイトを運営されている方へ。自社サイトを持っているという状態は、それ自体が資産です。ただし更新が止まっているサイトは、資産としてほとんど機能しません。月に1本でも、自分の言葉で書いたページを増やしていってください。

ECサイトを運営されている方へ。まず10月28日までにツールの棚卸しをしてください。そのうえで、売上のうちモール経由が何割かを計算してみてください。その割合が高いほど、自社サイトを育てる優先度は上がります。モールをやめる必要はありません。両方を持つことが目的です。

編集部の考察:借りている場所と、自分の場所

今回のニュースを読みながら考えていたのは、この10年でECの常識がどう変わったかということでした。

かつては「まずモールに出す」が正解でした。集客力が圧倒的だったからです。自社サイトは、余裕のある会社が後から作るものでした。

いまはこの順番が逆転しつつあると感じています。理由は2つです。1つは、今回のようにモール側のルール変更が頻繁になり、しかも影響が大きくなってきたこと。もう1つは、AI検索によって「深く書かれた情報を持つ場所」が見つけられやすくなってきたことです。

借りている場所は、便利ですが自分のものではありません。自分の場所は、育てるのに時間がかかりますが、誰にも取り上げられません。どちらか一方を選ぶ話ではなく、借りている場所で稼ぎながら、自分の場所を育てておくという二本立てが現実的な答えだと考えています。

そしてその「自分の場所」を育てる作業とは、結局のところ、自分たちの商品や仕事について書き残すことです。派手さはありませんが、これがいちばん効きます。

まとめ:通知が来る前に、自分の場所を用意しておいてください

Amazonのエージェントポリシーは、2026年10月28日付で適用されます。Amazonで販売されている方は、それまでにお使いのツールの確認をお願いします。

そしてこのニュースが本当に問いかけているのは、もっと手前のことだと思っています。あなたの事業は、誰かの通知一枚で揺らぐ場所に、どれだけ乗っていますか

ルールが変わることは止められません。止められるのは、それに全部を賭けている状態のほうです。今日書いた1ページは、誰にも取り上げられない資産になります。次の通知が来る前に、自分の場所を用意しはじめてください。

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