Web制作見積もりが3倍変わる理由と機能要件で判断する発注前チェックの基準とは
福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。
専門分野
ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計ECサイト改善の主な実績
この記事の監修
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
Web制作費が企業によって3倍以上変わる理由
Web制作を発注する際、同じような要件を複数の制作会社に依頼しても、見積もり額が100万円から300万円以上になることがあります。この価格差が生まれるのは、見積もりを決める要素が「機能」「工数」「体制」「設計思想」という4つの異なるレイヤーで判断されているからです。
Web制作の見積もりが3倍変わる理由とは、制作企業の工数設計・技術者配置・要件定義の深さが企業によって大きく異なり、同じ要件でも構造化データの設計深度・カスタマイズ範囲・保守体制が異なるため、正確な見積もり比較ができていない状態のことです。
見積もり差が生まれる4つのレイヤー
多くの企業は「ページ数」「機能数」だけで見積もり比較をします。しかしWeb制作の工数は以下の4層で決まります。
- 第1層:機能要件(何ができるか)
- 第2層:工数設計(誰が何日かかるか)
- 第3層:体制構成(誰がやるか)
- 第4層:運用設計(制作後の責任範囲)
見積もりを3分の1に下げている制作会社は、この4層のどれかを削減しています。安さの理由を理解しないまま発注すると、納品後に想定外の問題が発生する可能性が高まります。
Web制作の見積もりを決める要素とは何か

Web制作の見積もりを決める要素とは何か
見積もり額は複雑度と体制で決まります。
Web制作の見積もり額を決めるのは、依頼内容の「複雑さ」と「誰が対応するか」の2点です。
実際の現場では、この2つの要素を正確に把握できている企業は限定的です。
見積もりを左右する要件の複雑度
同じ「ECサイト制作」でも、複雑度が大きく異なります。
- 低複雑度:既製プラットフォーム(Shopify・MakeShop)の標準機能のみ使用
- 中複雑度:プラットフォームのカスタマイズ・限定的なAPI連携・既存データ移行
- 高複雑度:基幹システム連携・多言語対応・複雑な決済フロー・独自の在庫管理
「ECサイト制作」という言葉は同じでも、低複雑度なら200万円、高複雑度なら600万円以上になるのは、この複雑度の差です。
見積もりを決める工数計算の方法
制作会社の見積もりは「単価×日数」で計算されます。ここで差が出るのは日数計算の細かさです。
正確な見積もりを出す会社は、以下の項目を個別に計算します。
- 要件ヒアリング・仕様書作成
- ワイヤーフレーム・デザイン設計
- フロントエンド開発
- バックエンド開発
- API連携・外部システム連携
- テスト・デバッグ
- 本番環境構築
- ユーザー教育・マニュアル作成
粗い見積もりをする会社は、これらをひとまとめにして「開発:20日」という計算をするため、後から工数超過が発生しやすくなります。
体制による見積もり差
同じ機能でも、実装する技術者のレベルで工数が変わります。
| 体制タイプ | 単価・日数 | 納期 | リスク |
|---|---|---|---|
| ジュニア開発者中心 | 日単価5万〜8万×25日=125万〜200万 | 長い | 品質ムラ・修正が増える |
| シニア開発者中心 | 日単価15万〜20万×15日=225万〜300万 | 短い | 修正が少ない |
| チーム体制(PL・SE・開発者) | 日単価40万〜60万×20日=800万〜1,200万 | 最短 | 最小化 |
安い見積もり企業がジュニア開発者を配置しているのに対し、高い見積もり企業はシニア開発者やプロジェクトリード(PL)を配置しているため、最終的な工数と品質に差が出ます。
見積もりの構造を判断する5つのチェックポイント

見積もりの構造を判断する5つのチェックポイント
見積もりの質は行項目の詳細さで判別できます。
見積もり比較時に確認すべき項目は、「何がいくらか」という行項目の詳細さです。
正確な見積もりを出している企業と、粗い見積もりをしている企業は、この詳細さで判別できます。
チェック1:要件定義・ヒアリングが見積もりに含まれているか
見積もりに「要件定義:3日」という項目がある企業は、制作前に時間をかけて要件を整理しています。これがない企業は、打ち合わせ中に仕様が固まらず、後から追加工数が発生しやすくなります。
判断基準:要件定義・仕様書作成に5日以上の工数が含まれているか確認してください。これがあれば、制作前に仕様が明確になる可能性が高まります。
チェック2:設計フェーズ(ワイヤーフレーム・デザイン)の詳細度
見積もりに「デザイン:5日」と書かれているのか「ワイヤーフレーム:3日、デザイン案作成:3日、修正対応:2日」と細分化されているかで、制作の質が変わります。
細分化されている見積もりは、デザイン修正時の追加費用を最初から予想して組み込んでいるため、後での予算超過が少なくなります。
チェック3:開発フェーズで「フロント」「バック」「API連携」が分離されているか
見積もりに「開発:30日」とだけ書かれている企業は、工数内訳が不明確です。一方、「フロントエンド開発:12日、バックエンド開発:15日、API連携:5日、テスト:3日」と分離されている企業は、各フェーズの工数を正確に把握しています。
分離されている見積もりを選べば、どの部分で工数超過が起きるか追跡しやすくなります。
チェック4:テスト・デバッグが独立した項目か、開発に含まれているか
多くの粗い見積もりは、テスト期間を開発工数に含めています。これは納品後のバグ対応が多くなることを意味しています。
テストが独立した項目(「テスト:5日、デバッグ対応:3日」)として見積もられている企業は、本番前にバグをつぶす期間を確保しているため、納品後のトラブルが少なくなります。
判断基準:テスト・デバッグの工数が全体工数の15%以上あるか確認してください。これが10%以下だと、納品後の追加修正が発生する可能性が高まります。
チェック5:本番環境構築・運用手順書作成が含まれているか
見積もりに本番環境構築が含まれていない企業は、テスト環境で開発を終わらせ、クライアント側で本番環境への移行を対応させる可能性があります。これは後からサーバー設定の問題などが発生しやすくなります。
本番環境構築・マニュアル作成・ユーザー教育まで含まれている見積もりなら、納品後のトラブル対応が最小化されます。
見積もり差が生まれる業界標準単価と実際の相場

見積もり差が生まれる業界標準単価と実際の相場
技術者単価の差が見積もり額の3倍差を生んでいます。
Web制作業界には、技術者の日単価に大きな差があります。
ここ、実は多くの企業が見落としがちなポイントです。この差を理解しないまま見積もりを比較すると、安さだけで判断する企業が失敗する理由が見えます。
プロジェクトリード(PL)の単価差
プロジェクトを統括するPLの日単価は、経験と実績で決まります。
- 経験3年未満:日単価8万〜12万円
- 経験5年以上:日単価15万〜20万円
- 業界経験10年以上・実績豊富:日単価25万〜35万円
安い制作会社がPLを配置していない、または経験の浅いPLを配置しているため、プロジェクト管理が甘くなり、納期遅延や仕様変更への対応が遅くなりやすいです。
シニア開発者の単価差
実装を担当するシニア開発者の単価も大きく異なります。
- ジュニア開発者(経験1〜2年):日単価5万〜8万円
- ミドル開発者(経験3〜5年):日単価10万〜15万円
- シニア開発者(経験5年以上):日単価18万〜25万円
低単価の企業がジュニア開発者を配置している理由は、単価を下げるためです。しかし経験の浅い開発者は、実装に時間がかかり、バグが増えるため、結果的に全体工数が膨らむ傾向にあります。
見積もり額と技術者単価の関係性
見積もり額が低い企業と高い企業の差の多くは、「どの単価の技術者を配置しているか」で決まります。
たとえば、Shopifyカスタマイズの見積もりで以下のようなケースが考えられます。
- 安い企業(150万円):ジュニア開発者3名×月20日×日単価7万円=約150万円
- 標準企業(300万円):シニア開発者1名(20日)×日単価20万円+ジュニア開発者2名(15日)×日単価7万円=400万円
- 高い企業(450万円以上):PL+シニア開発者+ジュニア開発者の複数チーム体制
安い企業の見積もりで工期が伸びる理由は、単価の低い開発者だけで対応するため、実装に時間がかかるからです。
見積もり比較で失敗する企業のパターン
失敗パターン1:「ページ数」だけで比較している
「5ページのコーポレートサイト制作」という依頼で、複数社から見積もりを取得しても、実装の複雑度が企業によって異なるため、見積もり額の比較が無意味になることがあります。
ある企業は「ワイヤーフレーム→デザイン→コーディング」を丁寧にやるため250万円、別の企業は「既製テンプレートを使い、ページを組み替えるだけ」で80万円、という状況が起きます。
同じ「5ページ」でも、実装方法が異なるため、金額の比較ができていません。
失敗パターン2:修正対応が見積もりに含まれていない企業を選ぶ
「納品後の修正は別途費用」と書かれている企業は、要件定義やテストを簡略化しているため、見積もり額は安いが納品後の修正が増えます。
結果的に見積もり額+修正費用で300万円以上になるケースがあります。一方、修正対応が見積もりに含まれている企業なら、想定外の追加費用がかかりません。
福岡ECサイト株式会社が支援した企業の見積もり構造分析
ある地方のECサイト企業は、当初複数の制作会社から見積もりを取得し、最も安い150万円の企業に発注しました。しかし開発期間中に仕様変更が相次ぎ、最終的に270万円の支出となってしまいました。
福岡ECサイト株式会社の代表・鳥井敏史が見積もり内訳を分析したところ、当初の見積もりに「要件定義期間」「テスト期間」が含まれていなかったことが判明しました。
その企業は、最初から260万円の見積もり企業を選んでいれば、修正対応が全て含まれたため、最終的な支出は変わらなかったはずでした。重要なのは「初期見積もり額」ではなく「最終的な総支出額」の構造を理解することです。
見積もり額を判断する構造設計の視点
見積もり額を判断する構造設計の視点
工数構造の理解が正確な判断を可能にします。
Web制作の見積もり比較では、単純に「安い・高い」で判断するのではなく、「何にどの程度の工数をかけているか」という工数構造を理解する必要があります。
見積もりが妥当かを判断する工数規模の目安
Web制作の種類別に、妥当な工数規模は以下の通りです。
- コーポレートサイト(5〜10ページ):80〜150時間(10日〜20日)が標準的
- 中規模ECサイト(Shopifyカスタマイズ):300〜500時間(40日〜60日)が標準的
- 大規模ECサイト(基幹システム連携):800時間以上(100日以上)が標準的
見積もり額が極端に低い場合、実際の工数がこれより大幅に少なく設定されていないか確認してください。工数が少なすぎれば、品質が低下する可能性が高まります。
制作会社の「構造化」が見積もりの質を決める
福岡ECサイト株式会社では、Web制作の見積もりを「構造売上理論」に基づいて設計しています。これは、制作工数を単純に「機能×日数」で計算するのではなく、制作後の売上を生み出せる構造が実装されているか、を判断基準にするアプローチです。
売上につながるサイト制作では、以下の3つの構造が実装されます。
- 集客できる構造:タグ設計・構造化データ・カテゴリ設計が正確か
- 商品訴求の構造:ベネフィット表現・利用シーン・比較機能が実装されているか
- 信頼構造:企業情報・レビュー・実績表示が適切か
多くの安い見積もり企業は、これらの構造設計に時間をかけていないため、納品後に「アクセスはあるが売上が伸びない」という問題が起きます。
見積もり額だけでなく「どのような構造を実装するか」で企業を選択することが重要です。
見積もり比較表:正確な見積もりと粗い見積もりの違い
見積もり精度の高低は、以下の項目で判別できます。
| 比較項目 | 精度が高い見積もり | 粗い見積もり |
|---|---|---|
| 要件定義期間 | 5日以上を個別計上 | 開発に含める、または記載なし |
| デザイン修正 | 「修正対応:2回分」と明記 | 「修正対応は別費用」 |
| 開発フェーズの細分化 | フロント・バック・API連携を分離 | 「開発一式」とだけ表記 |
| テスト期間 | 全体工数の15%以上を計上 | 開発に含める、または10%未満 |
| 本番環境構築 | 独立した項目で計上 | 記載なし |
| ユーザー教育 | マニュアル作成・説明会を計上 | 含まれていない |
| 保守・運用期間 | 納品後3ヶ月のバグ対応を明記 | 「別途契約」と記載 |
見積もり書を読む時のチェックリスト
実際に見積もり書を受け取った時に、以下の項目を確認してください。これで見積もりの正確さが判別できます。
チェック項目1:工数の合計時間が記載されているか
見積もり書に「開発費用:300万円」と書かれているだけでなく「開発:60日間(480時間)」という時間単位での記載があるか確認してください。
時間記載がない見積もりは、実際の工数がどの程度必要かが不透明です。
チェック項目2:含まれる内容と含まれない内容が明確か
見積もり書の最後に「納品物に含まれるもの・含まれないもの」という明細がある企業は、後々のトラブルが少なくなります。
これがない見積もりは、発注後に「それは別費用」という追加請求が起きやすくなります。
チェック項目3:保守費用がいくらかを明記しているか
制作だけでなく「納品後12ヶ月の保守費用:月5万円」という記載があれば、企業は納品後のサポート体制を持っています。
保守費用の記載がない企業は、納品後のサポートを簡潔に考えている可能性があります。
判断基準:見積もり額による発注判断の目安
以下の基準で、見積もり内容を判断してください。
- コーポレートサイト(5ページ)で100万円以下:既製テンプレートまたは自動生成ツールを使用している可能性が高い。カスタマイズ性が限定的。
- コーポレートサイトで150万円〜250万円:標準的な工数設計。要件定義・テストが含まれている可能性が高い。
- ECサイト(Shopify)カスタマイズで200万円以下:カスタマイズ範囲が限定的、または基幹システム連携がない。
- ECサイト(Shopify)カスタマイズで300万円〜500万円:本格的なカスタマイズ。テスト・保守が含まれている。
- 見積もり額の上下が50%以上:要件定義時に工数が大きく異なる可能性。詳細なヒアリングを改めて実施すること。
発注判断の優先順位
見積もり額だけで企業を選ぶのではなく、以下の優先順位で判断してください。
- 見積もり内訳の詳細さ(工数が細分化されているか)
- 修正対応・保守期間の明記(後からの追加費用がないか)
- 制作後の運用サポートの有無(納品後も頼れるか)
- 見積もり額
優先順位の4番目に金額を置く理由は、最初の3つが満たされていれば、多少高めの見積もりでも最終的な総支出額は抑えられるからです。
Web制作見積もりの見積もる側の工数管理
見積もり企業側がどのように工数を計算しているかを理解することも重要です。
ボトムアップ見積もり(精度が高い)
機能ごと・フェーズごとに実装工数を計算し、それを合算する方法です。
例:ログイン機能=フロント3日+バック5日+テスト2日=10日、というように細分化して計算します。
この方法は精度が高いため、見積もりと実績の乖離が少なくなります。
トップダウン見積もり(精度が低い)
「似たようなプロジェクトは30日かかるから、このプロジェクトも30日」という経験則に基づく見積もりです。
Slack管理画面を見ながら、営業担当者が「大体このくらいかな」という感覚で見積もりを出している企業は、この方法を使っていることが多いです。
この方法は工数が外れやすく、納品後に追加工数が発生する傾向にあります。


