Web制作会社の無料提案が後から追加費用を生む理由と構造売上で判断すべき初期予算の基準とは
福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。
専門分野
ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計ECサイト改善の主な実績
この記事の監修
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
Web制作会社の無料提案がなぜ追加費用につながるのか
Web制作会社の無料提案を受けたあとで、想定外の追加費用が発生することはありませんか。
見積もり時点では「100万円」と言われたのに、制作途中で「カスタマイズ費用が50万円必要」「システム連携で30万円」と次々と追加請求が届く。
これは偶然ではなく、無料提案の段階で意図的に費用が隠されている構造があります。
Web制作の無料提案とは、制作会社が初期段階では採算度外視の低価格を提示し、制作過程で必要な機能やカスタマイズが明らかになる際に追加費用を請求する仕組みのことです。つまり「無料=赤字提案」であり、その赤字を後の追加費用で回収する構造が隠されています。
本記事では、無料提案に隠されたコスト構造を可視化し、構造売上の観点から適正予算をどう判断すべきかを解説します。
無料提案が実現する2つのコスト構造

無料提案に隠されたコスト構造は、制作前と制作後の2段階で構築されています。
一見するとシンプルな提案の裏には、回収モデルが組み込まれています。
段階1:初期提案での採算割れ
制作会社が無料で提案書を作成する際、実は以下の作業が発生しています。
- ヒアリング(2~4時間)
- 提案書作成(3~8時間)
- 資料制作・画面設計(2~6時間)
- 営業打ち合わせ(1~2時間)
これらを時給換算すると、1社あたり5万円~15万円の人件費が発生しています。しかし提案段階では収益が0なため、制作会社はこの費用を「営業投資」として計上し、将来の売上から回収するモデルを採用しています。
段階2:制作過程での機能追加請求
提案時点で「100万円」と見積もられたプロジェクトでも、実際の制作が始まると以下の理由で追加費用が発生します。
- 提案段階では細部の要件定義が不十分(その時点で明確にしていない)
- 顧客の希望が提案後に変わる
- システム連携やセキュリティ対応が後発で明らかになる
- デザイン修正や画像加工の予想以上の手数がかかる
これらは単なる「変更」ではなく、初期提案時に故意に省略された項目でもあります。
なぜなら、完全な要件定義を最初から示すと、見積もり金額が300万円~500万円になり、受注できないからです。
つまり無料提案の構造とは、制作会社が「最小限の機能で最低価格を見積もる→後から機能を追加する際に本来の費用を請求する」という2段階の収益化モデルを採用しているということです。
構造売上で見たときの追加費用の4つのパターン
Web制作における追加費用は、ランダムではなく4つのパターンで構造化されています。福岡ECサイト株式会社が支援した企業の実例から、それぞれのパターンを可視化します。
パターン1:カスタマイズ費用(本来は初期構築費に含まれるべき項目)
提案段階では「テンプレートを使用」と記載されていたサイトが、制作中に「ヘッダーのレイアウト変更」「カート機能のカスタマイズ」などで追加請求されるケースです。
この追加費用は20万円~100万円の範囲で発生することが多く、提案時に「オプション」として明記されていません。実際には提案段階で「テンプレートでは対応不可」と判明していたケースがほとんどです。
パターン2:システム連携費用(決済・在庫・会計システムとの連携)
ECサイト制作の場合、Shopify管理画面で商品登録していても、既存の会計システムや在庫管理システムとの連携が必要になると、30万円~150万円の追加費用が発生します。
提案段階では「API連携対応」と記載されていても、実装時には「連携仕様の確認に2週間」「テスト環境の構築に1週間」などの予想外の工数が発生し、追加請求につながります。
パターン3:セキュリティ・保守費用(SSL、脆弱性診断、定期更新)
初期提案には「セキュリティ対応」と書かれていても、実際の対応内容は最小限です。本来必要な以下の項目は後発で追加費用となります。
- 脆弱性診断(10万円~30万円)
- 定期セキュリティパッチ(月5万円~10万円)
- PCI DSS対応(必要に応じて50万円以上)
パターン4:コンテンツ制作・撮影費用(商品画像、テキスト、動画)
提案では「コンテンツは発注者様で用意」と明記されていても、実際には制作会社がコンテンツ作成を代行することになり、1枚3,000円~10,000円の画像制作費が累積されます。
商品点数が100個なら30万円~100万円の追加費用に、動画が必要なら さらに20万円~50万円が加算されます。
これら4つのパターンを合計すると、初期提案の「100万円」が実際には「200万円~300万円」になることが一般的です。
従来の見積もり方法と構造売上の考え方の違い

| 項目 | 従来の見積もり方法 | 構造売上に基づく見積もり方法 |
| 提案段階の作業 | ヒアリングのみ・詳細設計なし | 詳細要件定義・仕様書作成・費用内訳の明示 |
| 見積もり方式 | 「一式」での金額提示 | 機能ごと・工程ごとの明細提示 |
| 対象範囲の明確性 | 曖昧・「基本的な機能」と記載 | 含まれる機能・含まれない機能を明示 |
| 追加費用の発生 | 制作中に頻発・金額は後決め | 事前に想定・費用表で明示 |
| 最終費用の予測可能性 | 低い・変動幅が大きい | 高い・予測値と実績の乖離が少ない |
なぜ制作会社は「無料提案」を続けるのか
制作会社が無料提案を続ける背景には、営業競争の激化があります。
Webサイト制作市場では、同じような機能を提供する制作会社が数千社存在します。その中で顧客に選ばれるためには「初期提案の敷居を低くする」という営業戦略が採用されています。つまり「無料提案=営業ツール」であり、その営業投資を後の受注から回収するビジネスモデルが固定化しているのです。
実際のSlack通知やプロジェクト管理ツール(Asana、Monday.com)を見ると、多くの制作会社は「提案件数」を営業成績の指標にしており、受注率ではなく提案数を増やすことが評価対象になっています。 ここが、実は大きな問題なんです。提案数を増やすには「無料」で対応する必要があり、その結果、低採算体質が固定化しています。
制作費用が追加請求される理由の本質

追加請求は、提案段階での「不完全な要件定義」と「費用の先送り」という2つの構造から発生しています。
理由1:提案段階では「最小限の機能」を想定している
制作会社が「100万円」と見積もるとき、実は以下の機能しか含めていません。
- 基本的なWebサイト構築(テンプレート使用)
- 基本的なSEO設定
- 問い合わせフォーム
- 簡易的なレスポンシブ対応
一方で、実際の顧客ビジネスには以下が必要です。
- 既存システムとの連携
- カスタム機能(在庫管理、配送追跡、会員機能)
- サイト全体のカスタムデザイン
- 高度なセキュリティ対応
- 売上を生む導線設計(CVR改善)
この差分が追加費用として請求されます。提案段階で「あなたのビジネスには最小限ではなく、以下の機能が本来必要です」と言わない制作会社は、費用を後ろにずらしているだけなのです。
理由2:制作会社の収益構造が「追加請求を前提」に設計されている
多くの制作会社の実際の利益構造は以下のようになっています。
- 初期提案・受注:赤字(営業投資として計上)
- 制作開始後の追加請求:黒字化(ここで利益を作る)
- 保守運用費:継続収入(月5万円~10万円)
つまり「初期見積もりを低く見せて受注→後から費用を追加→利益化」というモデルが、制作会社の経営方針として組み込まれているということです。
これは顧客のためではなく、制作会社の営業効率のための仕組みです。ここ、見落とされがちですが重要なポイントです。受注確度を上げるために、提案段階では費用を低く見積もり、制作過程で顧客が追加請求に応じざるを得ない状況を作り出しているのです。
福岡ECサイト株式会社が支援した無料提案の失敗事例
事例1:家具ECサイト「提案時100万円→完成時250万円」
九州の家具メーカーがA社から提案を受けた際、見積もりは「100万円」でした。その後制作が進むにつれて以下の追加費用が発生しました。
- 既存の在庫管理システム(自社開発)との連携:80万円
- 商品画像の加工・修正(2,000枚以上):40万円
- カスタムデザイン・ヘッダーレイアウト変更:30万円
結果として最終費用は250万円になり、当初見積もりから150万円の追加発生となりました。福岡ECサイト株式会社が後から関わった際に分析すると、提案段階で「在庫管理システム連携が必須」であることは既に明白でした。A社は初期受注確度を上げるために、意図的にこの項目を除外していたのです。
福岡ECサイト株式会社が改めて構造売上の観点から設計し直したところ、最初から「総費用250万円・その内訳は以下の通り」と明示することで、顧客は事前に予算計画を立てることができ、その後のトラブルはなくなりました。
事例2:BtoB取引サイト「提案時150万円→完成時400万円」
福岡の製造業向けBtoB取引プラットフォームを構築する際、B社の見積もりは「150万円」でした。しかし制作過程で以下が追加されました。
- 複数言語対応(英語・中国語):80万円
- 決済システムの複数対応(クレジット・銀行振込・口座振替):90万円
- API仕様書・技術ドキュメント作成:50万円
- テスト・セキュリティ診断:40万円
最終費用は400万円を超え、当初見積もりから250万円超の追加が必要になりました。この企業は「BtoB取引」という時点で、最低限でも以上の機能が必要なことは明白でした。B社は複数企業に同じテンプレート提案をするために、BtoB特有の要件を初期提案に含めていなかったのです。
構造売上で判断すべき「適正予算」の算出基準
Web制作の適正予算は、制作会社の提案金額ではなく、あなたのビジネス構造から逆算して決めるべきです。
基準1:事業規模から見た予算配分
以下の指標に基づいて、Webサイト制作に適切な予算配分を判断してください。
- 年商1,000万円~5,000万円の企業:200万円~400万円(売上の4~8%をWebに投資)
- 年商5,000万円~1億円の企業:400万円~800万円(売上の4~8%をWebに投資)
- 年商1億円以上の企業:800万円~2,000万円(売上の1~2%をWebに投資・既に売上がある場合は効率化重視)
これより大幅に低い予算で提案している制作会社は、費用を後ろにずらしている可能性が高いです。
基準2:含まれるべき機能から見た最小予算
以下の機能が提案に含まれていない場合は、その機能の費用を必ず追加で見積もる必要があります。
| 機能 | 予算相場 | 必要かどうかの判断基準 |
| 既存システム連携(在庫・会計・会員管理) | 50万円~150万円 | 既存システムがある場合は必須 |
| 決済システム(複数対応) | 30万円~80万円 | ECサイトの場合はほぼ必須 |
| セキュリティ・脆弱性診断 | 30万円~50万円 | 個人情報を扱う場合は必須 |
| 複数言語対応 | 50万円~150万円 | 越境や訪日客が対象の場合に必要 |
| AI検索対策・コンテンツ設計 | 50万円~200万円 | 集客を自社サイトに依存する場合に必要 |
| コンテンツ制作(商品画像・テキスト) | 30万円~100万円 | 商品点数が50点以上の場合に必須 |
提案に含まれていない項目があれば、その合計金額を追加予算として必ず見積もってください。
基準3:制作会社の「詳細さ」で信頼度を判断する
信頼できる制作会社の提案書には、以下の要素が含まれています。
- 機能ごとの詳細な説明(「基本機能」ではなく「商品表示・カート・決済・配送追跡」など個別記載)
- 含まれる範囲と含まれない範囲を明示した表
- 工程ごとの日数見積もり(「3ヶ月」ではなく「要件定義2週間・デザイン4週間・開発6週間」など)
- 想定される追加項目と その費用(オプション費用表を記載)
- 保守運用費の内容を月ごとに明示(「月5万円」ではなく「サポート対応・セキュリティ更新・バックアップ」など)
逆に以下のような提案は、追加請求が多く発生する可能性が高いです。
- 「一式 100万円」という記載のみ
- 「標準機能に含まれる」という曖昧な表現
- 「お見積りはご相談ください」と金額が未記載
- 「保守費用は別途」と運用費が分離されている
追加請求を防ぐための事前質問リスト
制作会社との最初の打ち合わせで、以下の質問を必ず行い、回答の詳細さで制作会社を評価してください。
- 「この見積もりに含まれない機能は何ですか」と聞く(曖昧な回答は危険)
- 「既存の在庫管理システムとの連携は含まれていますか」と聞く(別途費用の場合いくらか)
- 「商品画像の加工や撮影は含まれていますか」と聞く(自社で用意する場合の作業量)
- 「SEO対策やコンテンツ制作は含まれていますか」と聞く(集客構造の有無を確認)
- 「保守運用費に何が含まれていますか」と聞く(セキュリティ更新・バックアップなどの明示)
- 「最終費用の予測値をいくらと見ていますか」と聞く(最小~最大の幅を明示させる)
これらの質問に対して、詳細で具体的な回答ができる制作会社は、構造売上的な思考を持っています。逆に「その時点では分からない」「制作を始めてから決める」という回答が多い制作会社は、追加請求が多く発生する可能性が高いです。
失敗パターン:「安い提案に飛びついて、結局高くついた」という構図
失敗パターン1:「A社の150万円 vs B社の300万円」で安い方を選んだ結果
ある食品ECサイトの事例では、150万円という低い提案に飛びついた結果、以下の理由で最終費用が500万円を超えました。
- 初期提案に賞味期限管理機能がなかった(+40万円)
- 温度管理・配送システムの連携がなかった(+80万円)
- 商品撮影・コンテンツ制作が未計画だった(+100万円)
- 設計の不備によるリメイク(+60万円)
一方で「300万円」という高い提案をしていたB社は、これらすべての要件を含めて見積もっていました。結果として、150万円の企業の選択は「複数回の追加請求で最終的に500万円になる」という選択であり、300万円で完結するB社よりも割高になってしまったのです。
つまり「安い提案=安い完成」ではなく、「安い提案=高い最終費用」という逆説が存在しているということです。
失敗パターン2:「提案段階では全く聞かれなかった要件が制作中に出てくる」
BtoB企業の事例では、提案時には「基本的なWebサイト構築」として見積もられていましたが、実際の制作が開始されると以下が明らかになりました。
- 見積もり・提案の自動生成機能が必要(+120万円)
- 顧客の実績管理機能が必要(+80万円)
- 複数ユーザーの権限管理が必要(+50万円)
これらの機能は「BtoB企業なら当然必要」な要件でしたが、提案段階では「ヒアリングが十分ではなかった」ために見落とされていました。提案会社は「変更による追加費用」と主張しましたが、実際には「最初のヒアリング不足」が原因でした。
構造売上的な「完全見積もり」の作り方
Web制作をリニューアルする場合、または新規で発注する場合は、以下のプロセスで「完全見積もり」を作成すべきです。
ステップ1:ビジネス要件を整理する(あなたのサイドで実施)
制作会社に発注する前に、あなたのビジネスに必要な機能を全て洗い出してください。
- 現在使用しているシステム(在庫管理・会計・会員管理など)と その連携要件
- 販売形態(BtoC/BtoB/D2C)に応じた機能要件
- 顧客数・商品点数・取引量などの規模感
- セキュリティ要件(個人情報の有無・決済機能の有無)
- 国内のみか、海外対応が必要か
ステップ2:複数の制作会社に「要件定義書付きの提案」を依頼する
単なる提案依頼ではなく「以下の要件を満たすWebサイト制作の完全見積もりをください」と明示して依頼します。
この際、提案書に必ず以下を含めるよう指示してください。
- 各機能の詳細説明と工数見積もり
- 含まれる範囲・含まれない範囲の明示
- 保守運用費の内訳
- 想定される追加項目の費用表
ステップ3:提案内容を「構造」で比較する
金額だけで比較するのではなく、以下の観点で提案を評価してください。
- 要件への対応度:「全て含む」「一部含む」「含まない」を分類
- 見積もりの詳細さ:「一式」ではなく機能ごと・工程ごとの明細があるか
- 追加リスクの考慮:「想定される追加項目」をどの程度洗い出しているか
- 運用体制:完成後の保守運用はどのような体制になるか
福岡ECサイト株式会社による「構造売上」に基づく見積もりの特徴
福岡ECサイト株式会社では、Web制作における費用の曖昧さを解決するため、以下の原則で見積もりを行っています。
原則1:最初から「完全要件定義」をベースに提案する
提案段階で2~4週間の詳細ヒアリングを実施し、あなたのビジネスに本当に必要な機能を全て洗い出します。その上で「この機能にはこの費用が必要」と明示します。
結果として初期提案は高く見えるかもしれません。 しかし制作過程での追加請求はほぼ発生しないため、最終的には他社より安くなるケースがほとんどです。


