ECサイトの海外展開で売上が伸びない理由と越境ECを成功させる3つの市場設計とは

人工知能 AI 設定中 設計 訓練 AIの進化
鳥井敏史

福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史

この記事を書いた人

福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史

ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。

専門分野

ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計

ECサイト改善の主な実績

・ECサイト制作歴15年以上 ・MakeShopアンバサダー ・JBEA EC業界SEO部門2025受賞 ・月商100万円 → 月商2,000万円 ・BtoB EC 月商100万円 → 月商1,000万円 ・支援企業:JR九州 / JAL / 名鉄 など

この記事の監修

福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史

ECサイトの海外展開で売上が伸びない理由

国内市場の飽和に対応する手段として、海外展開(越境EC)に取り組む企業が増えています。 しかし多くの企業が「商品を出しただけ」という状態に陥り、期待した売上に到達できていません。

ECサイトの海外展開とは、商品を単に外国語で表示するのではなく、各市場の購買習慣・決済方法・物流体制・信頼構造に合わせて全体を再設計することで、国内と同等かそれ以上の売上構造を構築する営業活動です。

海外市場は「異なる国」ではなく「異なる市場」です。 同じ日本企業のブランドであっても、市場が変われば購買理由・信頼基準・商品訴求の方法はすべて異なります。 この設計をスキップして商品だけを並べている企業がほとんどです。

海外展開で売上が伸びない3つの構造的理由

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1. 市場選定の構造が曖昧である

海外展開で最初に失敗するのは「市場選定」です。

多くの企業は「アジア市場が成長している」「英語が共通言語」という理由だけで進出国を決めています。 実際の現場では、このような一般論だけで市場を選ぶと、必ずと言っていいほど失敗します。 しかし実際には、GDPの成長率・一人あたりの購買力・自社商品のニーズ・物流インフラ・決済方法の普及率は市場ごとに大きく異なります。

判断基準として参考になるのは、以下の3つの指標です。

  • 一人あたりGDP:2,000ドル以上の市場が消費財の購買力がある
  • eコマース浸透率:10%以上ある市場が既にオンライン購買習慣がある
  • スマートフォン普及率:80%以上なら自社サイトへの流入が見込める

自社商品がファッション・美容・食品など消費財であれば、タイ・ベトナム・フィリピンよりは、シンガポール・香港・オーストラリアの方が市場適性が高い可能性があります。逆に日用雑貨であれば、人口規模の大きい東南アジアの方が適している場合もあります。

市場選定を構造的に判断できていない企業は、「進出したは良いが全く売れない」という状況に陥ります。

2. 現地の購買習慣と決済体制の設計が不足している

日本と海外の購買プロセスは根本的に異なります。

日本では、クレジットカード・代引き・銀行振込が主流で、ユーザーはAmazonや楽天などの「信頼できるマーケットプレイス」で購入する習慣があります。 一方、東南アジアではモバイルウォレット・QRコード決済・銀行送金・代金引換が主流であり、市場ごとに異なる決済手段が支配的です。

例えば、タイではPromptPayが全国民の50%以上に普及しており、クレジットカード決済より使用率が高いです。ベトナムではMomo、フィリピンではGCash、インドネシアではOVOが主流です。

自社ECサイトがこれらの決済方法に対応していなければ、現地ユーザーは「決済ができない」という理由だけで購入を諦めます。さらに深刻なのは、現地ユーザーにとって「聞いたことのない日本企業のサイト」よりも「信頼できるローカルマーケットプレイス経由」の方が安心だという心理です。

つまり、越境ECの成功には、単なる決済機能の追加ではなく、現地の購買心理と信頼構造全体を再設計する必要があります。

3. 現地の信頼構造に対応できていない

日本ブランドは海外で「品質が良い」「信頼できる」というイメージを持っていますが、そのイメージだけでは売上にはなりません。

現地ユーザーは、商品を購入する前に以下を確認します。

  • 現地言語での説明があるか
  • 他のユーザーのレビューや評価があるか
  • 返品・交換ポリシーが明確か(特に国際配送の場合)
  • 現地の有名人・インフルエンサーが使用しているか
  • 現地の大手マーケットプレイスに出品されているか

多くの日本企業のECサイトは、これらの「信頼基準」を現地化せずに運用しています。 ここは意外と見落とされがちですが重要です。英語で「Made in Japan」と書いてあるだけでは、現地ユーザーは購入判断ができません。

福岡ECサイト株式会社が支援した事例では、ある食品メーカーがタイ市場に進出した際、初期段階では月商50万円程度でした。しかし、現地のレビュー構造を再設計し、タイのインフルエンサーと提携し、Shopeeなどの現地マーケットプレイスに同時出品したところ、3ヶ月で月商300万円まで成長しました。このケースでは「商品の品質」は変わっていません。変わったのは「信頼設計」です。

越境ECを成功させるために必要な3つの市場設計

1. 進出市場の選定設計

越境ECの成功は「どの市場に進出するか」で70%が決まります。

市場選定設計とは、自社商品の特性と進出候補国の市場環境を照らし合わせて、最も売上が見込める市場を判定する設計です。

判断プロセスは以下の通りです。

  1. 自社商品のターゲット層を定義する(年代・所得層・ライフスタイル)
  2. 進出候補国の人口構成・所得分布を調査する
  3. 該当する市場規模を計算する
  4. 現地のeコマース浸透率・成長率を確認する
  5. 競合企業の進出状況を確認する

例えば、自社商品が「25~45歳の都市部女性向けの美容サプリメント」であれば、シンガポール・香港・台湾・韓国などの高所得層が多い市場が適切です。一方、「一般的な日用雑貨」であれば、人口1億人以上の東南アジア国が適切です。

この設計を正確に行うことで、進出後の初期投資を最小化し、売上が見込める市場に集中できます。逆にこの設計をスキップすれば、「商品がニーズのない市場に出品された」という致命的な状況に陥ります。

2. 現地決済・物流の統合設計

越境ECが失敗する2番目の理由は「決済と物流の不備」です。

現地決済・物流の統合設計とは、自社ECサイト・現地マーケットプレイス・配送業者・決済プロバイダーを一体として設計し、ユーザーがストレスなく購入・配送を完了できる体験を作ることです。

重要なのは、自社ECサイトだけで完結させようとしないことです。むしろ、現地ユーザーは「Shopee」「Lazada」「Tokopedia」などの大手マーケットプレイスで購入する習慣があります。自社ECサイトと並行して、これらのマーケットプレイスにも出品する二重出品戦略が現実的です。

決済面では、以下の対応が必須です。

  • 各市場で主流の決済方法を5つ以上対応させる
  • 現地のモバイルウォレット(Alipay・WeChat Payなど)に対応する
  • 海外決済プロバイダー(Stripe・2Checkout など)を統合する
  • 通貨換算と為替手数料を透明に表示する

物流面では、以下の構造が必要です。

  • 日本からの直送か、現地の流通センターからの配送かを決定する
  • 配送期間が「1~2週間」目安(ユーザー期待値)を保証する
  • 返品・交換時の国際配送料をどちらが負担するかを明記する
  • 現地言語での追跡・サポート体制を用意する

これらが整備されていない企業は、「高い配送料」「長い配送期間」「返品ができない」という理由で購入を躊躇されます。 現場では、この3つが揃わないだけで購入率が70%も下がることがあります。

3. 現地市場向けの信頼・訴求設計

越境ECの売上を左右する最後の要素が「信頼設計」です。

現地市場向けの信頼・訴求設計とは、商品説明・レビュー・ユーザーサポート・ブランドメッセージを現地の購買心理と信頼基準に合わせて再構成し、「この企業は信頼できる」という確信をユーザーに与える設計です。

日本で通用する「こだわり」「職人技」「Made in Japan」といった訴求は、海外では伝わりません。むしろ、現地ユーザーは以下の基準で信頼を判断します。

  • 現地ユーザーのレビュー(星評価・コメント)がどれだけあるか
  • 現地のインフルエンサーが使用・推薦しているか
  • ローカルセレブリティが関連しているか
  • 現地のニュースメディアに掲載されているか
  • 現地大手マーケットプレイスの「公式ストア」であるか

これらを整備するには、単なる翻訳ではなく、現地の消費文化と購買トレンドの理解が必須です。

具体的には、以下の対応が効果的です。

  1. 現地の言語で商品説明を現地ユーザー向けに再作成する(翻訳ではなく現地化)
  2. 現地のインフルエンサー・ブロガーとコラボレーションし、使用体験を発信させる
  3. 現地SNS(TikTok・Instagram・LINE など)での口コミ施策を展開する
  4. 現地向けのキャンペーン・セール(12.12ショッピングフェスティバル など)に参加する
  5. ユーザーサポートを現地言語で24時間提供する体制を作る

これらの施策により、初期段階では「新しい日本ブランド」から、成長段階では「現地で信頼できるブランド」へと進化します。

越境EC失敗パターンと成功パターンの比較

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要素 失敗パターン 成功パターン
市場選定 「アジア市場が大きい」という理由で複数国に同時出品 一人あたりGDP・eコマース浸透率・自社商品ニーズで1~2市場に絞る
商品訴求 日本語を英語に翻訳し、そのまま海外サイトに掲載 現地の購買心理に合わせて商品説明を再作成・現地言語化
決済方法 クレジットカード・銀行振込のみ 現地で主流のモバイルウォレット・QRコード決済に対応
出品戦略 自社ECサイトのみで運用 現地大手マーケットプレイスと自社ECの二重出品
信頼構築 「Made in Japan」「品質が良い」という訴求 現地インフルエンサー・レビュー・メディア掲載で信頼を可視化
サポート 英語メールのみの対応・返信が遅い 現地言語でSNS・チャット・メール対応・24時間体制
初期成果 月商10~50万円で停滞 初期段階で月商100万円超、成長段階で月商500万~1000万円

越境EC進出で注意すべき規制・税務の構造

越境ECには、各国の法規制が大きく影響します。商品訴求や価格設定のリスクを理解することが重要です。

医薬品・食品・化粧品の進出時の注意点

特に美容・健康関連の商品は、各国で表示基準が異なります。

例えば、日本で「美容サプリメント」として販売している商品が、タイでは「医薬品」として分類される場合があります。その場合、医薬品販売許可が必須になり、大幅な手続きが必要になります。

進出前に、以下を確認することが必須です。

  • 自社商品が進出予定国でどのカテゴリーに分類されるか
  • 必要な許可・認証が何であるか
  • 表示基準(成分表記・効能表記)がどのように異なるか
  • 関税・輸入税がいくらかかるか

知的財産・商標の構造

海外進出時に見落とされやすいのが「商標登録」です。日本で商標登録をしていても、各国での登録は別です。

進出国で商標登録をしていなければ、現地企業が同じ商標で別商品を販売する可能性があります。これを防ぐには、進出予定国で事前に商標登録を完了させることが必須です。

よくある失敗例:市場選定と信頼設計の不備

失敗例1:複数国への同時進出で全て失敗したケース

ある衣料品メーカーは、「アジア市場が成長している」という理由で、タイ・ベトナム・フィリピン・インドネシアの4国に同時進出しました。

各国に独立したECサイトを構築し、Facebook広告で認知を広げました。しかし、初期段階では各市場で月商20~30万円程度で停滞し、3ヶ月で広告費が回収できず、撤退を余儀なくされました。

原因は「市場選定の構造がない」ことでした。同社の衣料品は、25~35歳の都市部中流層向けであり、一人あたりGDPが3,000ドル以上の市場が適切でした。しかし、ベトナムやフィリピンの一人あたりGDPは2,000ドル程度であり、ターゲット層の購買力が不足していました。

同じ予算を「シンガポール+香港」の2市場に集中させていれば、初期段階で月商300万円以上の売上が見込めたと考えられます。

失敗例2:信頼設計をスキップして自社ECのみで運用したケース

ある食品メーカーは、Shopifyで多言語対応のECサイトを構築し、タイ市場に進出しました。決済もStripeで対応し、物流もDHL国際配送で対応しました。しかし、月商は初期段階で10万円程度で停滞しました。

原因は「信頼設計」の欠如でした。タイのユーザーにとって、初めて聞く日本企業のサイトで購入することは、ハードルが高いのです。むしろ、同社の商品をShopeeやLazadaなどの現地大手マーケットプレイスに出品し、そこでレビューを積み重ねることが先決でした。

後に同社は、Shopee出品を開始し、タイのインフルエンサーとコラボレーション動画を制作しました。 この戦略転換が売上急増の転換点でした。

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