越境EC物流費が高騰して赤字になる企業の共通点と構造売上で判断すべき配送戦略の基準とは
福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。
専門分野
ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計ECサイト改善の主な実績
この記事の監修
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
越境ECの物流費が売上を圧迫し続ける理由
結論:越境ECの物流費問題は、配送戦略の設計ミスです。
越境EC事業者の多くが同じ課題で苦しんでいます。売上は月200万円を超えているのに、物流費が売上の30~40%を占めて赤字になるケースです。実際、弊社に相談に来る企業の8割が、この構造で困っています。
「商品は売れている。でも利益が出ない」という状況の背景には、配送戦略の根本的な設計ミスがあります。
越境EC物流費の高騰で赤字になる企業の共通点とは、商品の種類や配送先を統一できず、配送コストをサイト構造で削減する設計がない状態です。つまり、個別対応で対応し続けることで、一件あたりの配送費用が常に高止まりする構造になっています。
この記事では、なぜ越境ECで物流費が経営課題になるのか、そしてどうやって配送戦略を構造として設計すべきかを、構造売上理論の視点から解説します。
物流費が売上の30%を超える本当の理由
越境ECの物流費が高い理由は、配送先が分散しているからではありません。配送戦略をサイト構造で設計していないからです。
Shopify管理画面で配送設定を見ると、配送先別・重量別・商品種別に異なる料金設定をしているケースが多いです。しかし、その計算根拠が「物流会社が提示した料金」であって、自社の採算性ベースではありません。つまり、「商品Aはいくら利益が必要か」という判断なしに、配送費用を決めている状態です。
- 配送先を限定せず、どの国にも対応している
- 商品ごとの配送費用の計算根拠がない
- 配送方法を複数用意しているが、最適化がされていない
- 顧客が配送方法を選べる設計になっていて、安い選択肢を選ばれている
- 返品対応の物流コストが計算に入っていない
これらの状況は、売上が増えれば増えるほど、赤字が拡大します。配送件数が増えると、配送費用も比例して増えるからです。ここが越境ECの厄介な点でもあります。
越境EC物流費の高騰とは何か

越境EC物流費の高騰とは、配送戦略をサイト構造で設計していないために、一件あたりの配送コストが常に売上に対して一定比率以上を占める状態です。
この状態では、商品が売れれば売れるほど、物流費で赤字が増える逆説的な構造になります。
重要なのは、物流会社の料金が高いのではなく、自社がどの商品をどの地域にいくらで届けるかという設計そのものが抜けているということです。
越境ECで物流費が赤字化する4つの構造的要因
物流費が経営を圧迫する越境ECには、共通の構造的問題があります。
1つ目は、配送先を制限していない構造です。「どの国でも対応する」という方針は、顧客満足度は高いですが、配送費用の予測が立ちません。例えば、日本から中東に送る場合の配送費用と、日本から東アジアに送る場合の配送費用では、数倍の差があります。しかし、販売価格は同じ設定にしているケースがほとんどです。
2つ目は、商品原価と配送費用のバランスが取れていない構造です。原価500円の商品を3,000円で売っている場合、配送費用が800円なら利益は1,700円です。しかし、原価1,500円の商品を4,000円で売っている場合、同じ800円の配送費用なら利益は700円になります。商品ごとに採算性が異なるのに、配送費用は一律で設定しているケースが多いのです。
3つ目は、配送方法の最適化がされていない構造です。国際配送には、「国際郵便」「国際宅配便」「FBA(フルフィルメントサービス)」「現地パートナーの倉庫からの配送」など複数の選択肢があります。しかし、その判断基準が「配送速度」だけになっていて、コストと到達率のバランスが取れていません。
4つ目は、返品と交換にかかる物流コストが計算に入っていない構造です。越境ECの返品率は国内ECの3~5倍です。返送費用も返品処理費用も、大きな経営負担になります。しかし、その費用が販売価格に反映されていません。
越境EC物流戦略の構造売上アプローチとは何か
構造売上理論では、物流費も「制御可能な設計要素」として捉えます。
つまり、物流費を削減するのではなく、「どの商品をどの地域にいくらで届けるか」という戦略として設計することで、初めて採算性が生まれるという考え方です。
福岡ECサイト株式会社では、これを「配送構造設計」と呼んでいます。配送構造設計とは、商品原価・販売価格・配送費用・返品率を統合して、初めから利益を確保する配送戦略を設計することです。
配送構造の3つの設計軸
越境ECの物流費を構造的に削減するには、3つの軸で同時に設計する必要があります。
1つ目は「配送先の選別」です。全世界対応ではなく、採算性が取れる地域に限定します。例えば、日本から東アジア(中国・台湾・香港・シンガポール)に限定し、欧米や中東への配送は行わない、という判断です。これだけで配送費用を30~50%削減できます。
2つ目は「商品群の分類」です。同じ価格帯の商品でも、重さや大きさが異なれば配送費用が変わります。ここで重要なのは、配送費用の低い商品と高い商品を組み合わせるセット販売や、定期配送プランを設計することです。
3つ目は「配送方法の使い分け」です。重さが軽い商品には国際郵便、重い商品には国際宅配便、という単純な分け方ではなく、配送先・納期・到達率・返品率を全て考慮して、配送方法を決めます。
これらを統合すると、次のような設計になります。
| 従来の越境EC配送戦略 | 構造売上に基づく配送戦略 |
|---|---|
| 全世界対応 | 採算性のある地域のみ対応 |
| 配送方法は顧客選択 | 商品・配送先ごとに配送方法を固定 |
| 返品費用は実費負担 | 返品前払いまたは返品不可の設定 |
| 配送費用は配送会社の提示額 | 商品原価から逆算した配送費用上限を設定 |
| 単発販売のみ | 定期配送プランで配送頻度を最適化 |
配送先選別で利益を生む判断基準
越境ECで配送先を限定することは、一見すると売上機会の喪失に見えます。しかし、実際には赤字案件を排除することで、全体の利益率を改善するステップです。
判断基準は「一件あたりの配送費用が売上の20%以下か」という数値です。配送費用が売上の20%を超える地域への配送は、根本的に採算性が合いません。例えば、販売価格が$30の商品に対して、配送費用が$7以上になる地域は、配除の対象です。
具体的には、日本から発送する場合、以下のような地域分類が目安になります。
- 黒字域:東アジア・東南アジア(配送費用が売上の15%以下)
- 限定域:オーストラリア・ニュージーランド(配送費用が売上の20~25%)
- 赤字域:北米・ヨーロッパ・中東(配送費用が売上の30%以上)
赤字域への配送は、配送費用を顧客負担にするか、販売価格を大幅に上げるか、対応を中止するかの3択になります。現状のまま続けると、売上が増えるほど赤字が拡大します。
商品原価から逆算する配送費用の上限設定
越境ECで利益を確保するには、「配送方法を決めてから価格を決める」のではなく、「目標利益から配送費用を決める」という発想の転換が必要です。
例えば、原価が1,000円の商品があります。販売価格を4,000円に設定する場合、以下のように逆算します。
- 販売価格:4,000円
- 商品原価:1,000円
- プラットフォーム手数料(8~15%):400円
- 梱包材・関税対応コスト:200円
- 目標利益:1,000円
- 配送費用の上限:1,400円
つまり、この商品の配送費用は1,400円を超えてはいけません。配送費用が1,400円を超える地域への販売は、価格を上げるか、商品を別にするか、対応を止めるかの判断が必要になります。
GA4で越境ECの配送費用を地域別に集計すると、赤字地域が可視化されます。多くの企業は、ここで初めて「どの地域が赤字なのか」を認識します。
定期配送プランが物流費を削減する理由
越境ECで単発販売を続けると、配送件数が増えるほど配送費用が増えます。しかし、定期配送プラン(サブスクリプション)に転換すると、物流費の構造が変わります。
例えば、月1回の定期配送であれば、まとめて配送できるプランを設計できます。顧客視点では「毎月配送料金0円」に見えても、企業視点では「月1回の配送で複数商品を同梱」という設計によって、一件あたりの配送費用を下げることができます。
定期配送で配送費用を20~30%削減できた事例が多いのは、この「配送頻度の最適化」によるものです。
越境EC物流費が赤字になる企業の失敗パターン

失敗パターン1:「配送費用が高い」と判断して、物流会社を変えた企業です。物流会社を3社から2社に変更しても、配送先を制限していなければ、配送費用は高止まりします。根本原因は物流会社ではなく、配送先の選定にあります。
失敗パターン2:配送費用を顧客負担にした企業です。これで確かに自社の赤字は消えます。しかし、配送費用が高い地域の顧客は購入をやめます。結果として、売上は減り、利益は改善するものの、事業全体が縮小します。これは「利益の改善」ではなく「事業の衰退」です。
福岡ECサイト株式会社が支援した越境EC物流改革の事例
越境EC事業者A社は、月商800万円でしたが、物流費が月320万円(売上比40%)で、実質赤字でした。配送先は世界中で、配送方法は顧客選択制になっていました。
福岡ECサイト株式会社が配送構造設計を行った結果、以下の施策を実施しました。
- 配送対象を東アジア・東南アジアに限定(世界配送から変更)
- 商品原価から逆算した配送費用上限の設定
- 定期配送プランの新設(新規顧客の30%が定期に転換)
- 返品前払い制度の導入(返品率が15%→3%に低下)
実施後、月商は850万円(6%増)に対して、物流費は月200万円(配送件数は増加したが、費用は38%削減)に改善されました。これにより月間利益が200万円から300万円に増加し、事業として持続可能な構造に変わったのです。
重要なのは、売上を大きく増やすのではなく、既存の売上構造を最適化することで、利益を生み出した点です。
越境ECの配送戦略で判断すべき優先度の基準

配送戦略の改善は優先順位が重要です。 配送費用が売上の何%かで判断基準が変わります。
配送費用が売上の30%以上である企業は、配送先の選別を最優先してください。赤字地域への配送を続ける限り、売上が増えるほど赤字が拡大します。
判断基準は「配送費用が売上の20%以下に下がるまで」です。
配送費用が売上の20~25%である企業は、商品原価の見直しと定期配送プランの設計を同時に行ってください。配送費用そのものではなく、商品構成を最適化することで、利益率を改善できます。
配送費用が売上の15%以下である企業は、返品率の削減と顧客満足度の向上に注力してください。配送費用は既に最適化されているため、これ以上の削減は難しいです。むしろ、返品を防ぎ、定期購入を増やすことが利益改善につながります。
配送戦略の実装フロー
配送戦略を実装するには、以下の判断プロセスを経ます。
第1段階は「現状分析」です。GA4とShopify管理画面から、配送先別・配送方法別・商品別の配送費用を集計します。ここで赤字地域が可視化されます。
第2段階は「配送先の選別」です。赤字地域を特定し、その地域への配送を中止するか、販売価格を上げるか、配送費用を顧客負担にするかを判断します。
第3段階は「商品原価の見直し」です。商品ごとに目標利益から配送費用の上限を逆算し、その費用で配送できる地域を特定します。
第4段階は「配送方法の最適化」です。配送先・商品ごとに、最適な配送方法を決定します。顧客選択制は廃止し、自動的に最適な配送方法が適用される設定にします。
第5段階は「定期配送プランの設計」です。単発販売と定期配送で、配送費用を分ける設計を行います。
越境ECの物流費改善で重要な、現場の判断ポイント
配送戦略の改善で最も難しい判断は「赤字地域への配送を本当に止めるか」という決断です。
売上が数百万円ある地域であれば、赤字でも続けたいという気持ちが生まれます。しかし、その赤字が毎月積み重なり、最終的には事業全体を圧迫します。
つまり、短期的には「売上を失う」ように見えても、中期的には「事業の持続可能性を確保する」判断になるのです。この決断、正直なところ経営者にとってかなり勇気が要りますが、越境ECの成功を左右する重要なポイントです。
よくある判断ミス:配送費用だけを見ている
配送費用を改善する際、多くの企業が「配送費用の絶対額」だけを見ています。しかし、重要なのは「売上に対する配送費用の比率」と「顧客あたりの生涯購入額」です。
例えば、配送費用が月5万円の地域でも、顧客あたりの月間利益が2,000円であれば継続する価値があります。しかし、配送費用が月10万円で、顧客あたりの月間利益が1,000円であれば、継続する価値はありません。この数字で見ると判断しやすくなりますね。


