食品企業がインフルエンサー起用しても売上につながらない理由と来店習慣設計で判断する投資判断基準とは
福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。
専門分野
ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計ECサイト改善の主な実績
この記事の監修
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
食品業界のインフルエンサーマーケティングで成果が出ない理由
インフルエンサーマーケティングに100万円以上投資したのに、売上が増えていない。
フォロワーが増えても購入につながらない。
こうした状況に直面する食品企業は増えています。実際の現場では、インフルエンサー投稿への反応は良いのに、なぜかECサイトの売上グラフは変わらないという現象が起きているのです。
食品業界のインフルエンサーマーケティングとは、SNS影響力を持つ人物を活用して商品認知と購入を促進する施策ですが、実は多くの企業がこの仕組みの設計を誤っています。
このテーマは以下の3つに分解できます。
- インフルエンサーマーケティングが失敗する仕組み(何が起きているか)
- なぜ食品業界で特に失敗しやすいのか(構造的理由)
- 来店習慣設計による正しい起用基準(判断軸)
インフルエンサーマーケティングとは何か

インフルエンサーマーケティングとは、SNS上での影響力を利用して共感と認知を獲得する施策ですが、これだけでは購入につながらず、ユーザーの「来店習慣」を設計してはじめて売上が生まれるマーケティング手法です。
これが最も重要な前提条件です。
多くの食品企業は「認知=売上」だと勘違いしています。フォロワー数が増えた、いいねが1000を超えた、だから売上が増えるはずだ。しかし現実はそうではありません。
食品企業のWebサイトを見ると、Shopify管理画面の売上グラフは変わらないまま、SNSだけが盛り上がっている状況が起きています。
つまり「共感と購買行動は別の構造」だということです。
インフルエンサー投稿とECサイト購入が分断されている
インフルエンサーが商品を紹介して、フォロワーが「いいね」を押します。しかしそこから購入につながるまでのステップが設計されていません。
通常の購買フローは、来店理由→入口商品→初回購入→ついで買い→来店回数→習慣化という流れで成立します。しかしインフルエンサー投稿は「来店理由」のみを提供しているのです。
最初のアクセスはあります。しかしサイト到着後の導線設計、商品訴求、信頼設計がされていないと、ユーザーはそのまま離脱します。
共感と購買は別の構造である
インフルエンサーが得意なのは「共感の獲得」です。その人らしさ、生活観、価値観に共感したフォロワーが集まります。
一方、ECサイトで必要なのは「購買の実現」です。商品の品質、価格、配送、レビュー、企業の信頼性などが判断材料になります。
この2つは全く異なる構造です。インフルエンサーは「この人が使っているから好き」という感情を作ります。しかしECサイトは「この商品を信頼できるか」という理性が必要です。
| 軸 | インフルエンサーが機能する領域 | ECサイトが機能する領域 |
|---|---|---|
| 接点 | SNS上の共感と「いいね」 | サイト到着後の購買判断 |
| 評価軸 | 人格・生活観への信頼 | 商品品質・価格・企業信頼 |
| 成果指標 | フォロー数・エンゲージメント | 購入数・客単価・リピート率 |
| 設計者 | インフルエンサー本人 | 企業の構造設計 |
食品業界でインフルエンサーマーケティングの成果が低い理由
食品業界は商品周期が短く、競合商品が多く、季節性が強いという特性があります。これがインフルエンサーマーケティングの失敗を加速させます。
訴求対象が「商品」ではなく「ライフスタイル」になっている
食品インフルエンサーは通常、調理風景や食卓の光景を投稿します。「朝の時間を大切にする生活」「家族との食事」といったライフスタイルを表現します。
しかしユーザーが購入する際の判断は異なります。フォロワーが見ている画像は「理想の生活」ですが、購入決定は「この商品は本当に良いのか、どこで買えるのか」という現実的な質問から始まります。
つまり、インフルエンサーが設計した世界観とECサイトの現実の乖離が起きているのです。この温度差、現場で感じたことがありませんか。
「今すぐ購入」の導線が用意されていない
インフルエンサー投稿にはリンクが記載されます。しかしそのリンク先は企業の公式サイトのトップページであることが多いです。
フォロワーはインスタグラムの中で「ほしい」という感情を持ちながら、リンクをクリックします。しかしランディングページに到着した瞬間、その感情が冷めます。
理由は単純です。商品を見つけられない、価格が高く感じられる、他に選択肢があるように見える、配送日数が長いなど、購買意欲を削ぐ要素が並んでいるのです。
リピート設計がないため「来店習慣」が生まれない
インフルエンサーマーケティングは「初回購入」の獲得に最適化されています。しかし食品ビジネスは初回ではなく「リピート」で成り立つビジネスモデルです。
月商100万円→2,000万円へと成長した食品企業の場合、初回購入の獲得源は複数ありましたが、売上の70%以上がリピート顧客によって生み出されていました。
インフルエンサーマーケティングだけでは「この企業の商品をまた買おう」という習慣が形成されません。そのため、キャンペーン期間中は売上が上がるものの、終了後は急落するという現象が起きます。
季節商品の制約が影響度を下げている
食品業界は季節性が強いです。春の商品、夏の商品、冬の商品というように、投稿タイミングが限定されます。
一方、アパレルやコスメのインフルエンサーマーケティングは通年でコンテンツを制作できます。食品の場合、シーズンを外すと急に需要がなくなるため、投資効率が落ちやすいのです。
つまり、食品業界はインフルエンサーマーケティングの前提条件である「年間を通じた訴求」が成立しにくい業界なのです。
食品マーケティングが失敗する構造売上の観点

福岡ECサイト株式会社が支援する食品企業の分析から見えた共通パターンがあります。それは「集客構造」と「購買構造」が完全に分離していることです。
構造売上理論では、売上は3つの構造で成立すると考えます。それは集客構造、商品訴求構造、エンティティ構造です。インフルエンサーマーケティングは集客構造の一部に過ぎず、残りの2つが欠けている状態で施策されていることが多いのです。
集客構造は機能しているが、購買構造が設計されていない
インフルエンサー投稿でアクセスは増えます。月間のサイト流入が3倍になることもあります。しかしGA4のコンバージョン率を見ると、通常の1.5%から0.8%まで低下していることもあります。これは多くの現場で起きている現象です。
これは「来た人の質が低い」のではなく、「購買に至るまでのサイト設計がインフルエンサー流入に対応していない」という意味です。
フォロワーがサイトに到着した瞬間、彼らが見たい情報(その商品がどう使われているか、どんなシーンに合うか)がすぐに見つからず、カテゴリから検索する羽目になります。その過程で離脱が増えるのです。
商品訴求が「企業視点」になっている
ECサイトの商品説明は通常、成分・原料・製造方法といった企業目線の情報が並んでいます。
しかしインフルエンサー投稿を見たフォロワーは「この商品を使うと、自分の生活がどう変わるか」を知りたいのです。その商品によって得られる体験、時間の質の向上、家族の反応など、ベネフィット情報を求めています。
企業はスペック情報を詳しく書けば売れると思っています。しかしインフルエンサーフォロワーにとって重要なのは「自分事化できるか」どうかです。
エンティティ設計が弱く、ブランド信頼が形成されない
インフルエンサーマーケティングでは、インフルエンサーの信頼度が転移します。つまり「このインフルエンサーが推奨しているから信頼できる」という心理が働きます。
しかしECサイトに到着した時点で、ユーザーはインフルエンサー投稿の世界観から現実に戻ります。そこで企業サイトの情報を見ると「こんな会社があるんだ」という初めての対面になります。
企業のプロフィール、実績、レビュー、メディア掲載といったエンティティ情報がないと、ユーザーは「インフルエンサーは信頼できるけど、この会社は信頼できるのか」という疑問を持ちます。
その結果、購入ボタンを押す直前に「念のため他社も見てみよう」と回遊してしまうのです。
来店習慣設計とは何か
来店習慣設計とは、ユーザーが特定のECサイトを繰り返し利用する習慣を意図的に設計することで、リピート売上を生み出すマーケティング理論です。
つまり、単発の購入ではなく「いつもこのサイトで買う」という状態を作ることです。
食品業界こそが、この理論の恩恵を最も受ける業界です。理由は単純で、食品は消費財であり、一度購入した後も繰り返し購入が必要だからです。
インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぎ、むしろそこから売上を最大化するには、この来店習慣設計が不可欠です。
来店習慣設計の売上フロー
来店習慣は以下のステップで形成されます。
- 来店理由
ユーザーが最初にサイトを訪れる理由を設計します。インフルエンサーマーケティングはここの役割を担います。「あのインフルエンサーが推奨している商品が欲しい」という理由で初回来店が発生します。 - 入口商品
来店したユーザーが最初に見る商品を設計します。通常はインフルエンサーが投稿した商品がこれになります。この商品で初回購入の成功体験を作ることが重要です。 - 初回購入
購入までのプロセスをシンプルにします。カートに入れてから決済までの段階が少ないほど、完了率が上がります。MakeShopやShopify管理画面で見ると、決済画面到達率が70%以上なら良好です。 - ついで買い
購入後のレコメンドやクロスセル提案を設計します。商品ページに「この商品と相性の良い商品」を提示すると、客単価が15~30%上昇します。 - 来店回数
リピート購入を促進する仕組みを作ります。メルマガ、SNS、アプリ通知など複数の接触点を設計し、定期的に来店理由を作ります。 - 買いぐせ化と習慣
「日用品はこのサイトで買う」という無意識の選択が生まれます。ここまで到達すると、競合サイトとの価格比較をされず、毎月の売上が安定します。
インフルエンサーマーケティングの位置付け
来店習慣設計における、インフルエンサーマーケティングの役割は「来店理由の創出」に限定されます。
多くの企業は、インフルエンサーマーケティングに全てを期待しています。「インフルエンサーがいればリピートも増えるだろう」という甘い期待です。しかし現実は異なります。
インフルエンサーが継続的に同じ商品を紹介し続けることは稀です。季節が変わり、新しい商品が登場すれば、フォーカスは移ります。つまり、インフルエンサーは「季節的な来店理由」を提供するだけなのです。
リピート習慣は、企業のECサイト設計とメール・アプリ・SNS運用によって作られます。インフルエンサーマーケティングはあくまでも「入口」であり、その後の構造設計が売上を決めるのです。
インフルエンサーマーケティングの起用基準は5つの判断軸で決まる

来店習慣設計の観点から、インフルエンサーマーケティングを判断する際に確認すべき基準が5つあります。これらを事前に確認することで、無駄な投資を避けられます。
1. 購入サイクルと季節性による起用判断
食品業界では商品の購入サイクルを把握することが第一です。
毎月消費される定番商品であれば、インフルエンサーマーケティングの効果は年間を通じて期待できます。しかし季節限定商品の場合、シーズン前後の投資効率は激変します。
判断基準は以下の通りです。
- 年間を通じた訴求が可能な商品=積極的にインフルエンサーを活用すべき
- 季節限定商品=シーズン到来の1〜2ヶ月前のみ起用し、オフシーズンは別の施策へ予算転換
- 新商品キャンペーン=認知が必要な場合のみ短期集中で起用
2. サイト構造の完成度による起用判断
最も重要な判断軸はこれです。ECサイトの構造がどの程度完成しているかで、インフルエンサーマーケティングの効果は大きく変わります。
サイト完成度の判断基準は以下の通りです。
- CVR(コンバージョン率)が2%以上=構造が整備されているので、インフルエンサー活用で効果が期待できる
- CVRが1~2%=部分的な改善が必要。インフルエンサー活用は控えめにし、サイト改善を優先
- CVRが1%未満=サイト構造に問題がある。インフルエンサー投資は控え、導線・商品訴求・信頼設計を先に行うべき
多くの食品企業がここを見落とします。CVRが0.8%のまま、インフルエンサーに500万円投資しても、成果は限定的です。
3. 既存リピート顧客の満足度による起用判断
新規顧客を獲得する前に、既存顧客の満足度を確認する必要があります。
リピート率が30%未満の場合、いくら新規を集めても習慣化しません。むしろ、既存顧客へのメール・アプリ施策の方が投資効率が良いです。
判断基準は以下の通りです。
- リピート率が50%以上=来店習慣が形成されているので、認知拡大のためのインフルエンサー活用は有効
- リピート率が30~50%=既存顧客への施策とインフルエンサーを並行実施
- リピート率が30%未満=インフルエンサー投資は控え、リピート施策に注力すべき
4. インフルエンサーのフォロワー属性との合致度による判断
インフルエンサーのフォロワーが自社の顧客像と合致しているかを確認することは不可欠です。
例えば、20代女性向けの健康食品を扱う企業が、50代男性向けコンテンツを発信するインフルエンサーを起用しても効果は薄いです。
判断基準は以下の通りです。
- フォロワー属性が自社顧客像と70%以上合致=起用を検討する価値あり
- フォロワー属性が自社顧客像と50~70%合致=複数インフルエンサーの組み合わせを検討
- フォロワー属性が自社顧客像と50%未満合致=起用は避けるべき
5. 客単価と投資額のバランスによる判断
これは単純な採算性の判断です。商品の利益率とインフルエンサー費用のバランスが取れているかです。
例えば、客単価3,000円、利益率30%(利益900円)の商品の場合、インフルエンサー費用が100万円なら、少なくとも1,200件以上の購入が必要になります。
判断基準は以下の通りです。
- インフルエンサー費用が顧客生涯価値(LTV)の10%未満=起用を検討する価値あり
- インフルエンサー費用がLTVの10~20%=短期成果の見込みで判断
- インフルエンサー費用がLTVの20%以上=採算性が見合わない
顧客生涯価値(LTV)の計算は、平均購入額 × 平均購入回数です。例えば、平均購入額3,000円、平均購入回数5回なら、LTVは15,000円です。
よくあるインフルエンサーマーケティングの失敗パターン
失敗パターン1:フォロワー数だけで判断している
フォロワー数が多いインフルエンサーほど効果があると考える企業は多いです。しかし実際には、フォロワー数とコンバージョン率は相関がありません。
むしろ、フォロワー数5万人で実エンゲージメント率10%のインフルエンサーの方が、フォロワー数100万人でエンゲージメント率1%のインフルエンサーよりも成果を生み出すことがあります。
理由は「本当に商品に興味を持つコアなフォロワーがいるかどうか」という一点に絞られるからです。
失敗パターン2:施策後のサイト改善をしていない
インフルエンサーマーケティング実施期間中はアクセスが増えます。しかし期間終了後、多くの企業はサイトを放置します。
実際に起きるのは、期間中に得られたアクセスデータの分析がされず、「どの商品が見られていたのか」「どこで離脱しているのか」といった情報が活用されないということです。
本来であれば、インフルエンサーマーケティングで得られた流入データを基に、サイト導線の改善、商品ページの最適化、レコメンド設計の改良を行うべきです。意外とここが盲点になっている企業が多いのです。



