ECサイトのシステム更新でアクセス解析が途切れる理由と継続改善の3つ設計とは
福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。
専門分野
ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計ECサイト改善の主な実績
この記事の監修
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイトの新年度システム更新でアクセス解析データが途切れる理由
新年度を迎えてECサイトをシステム更新した企業の多くが、同じ課題に直面しています。それはアクセス解析データが途切れてしまうという問題です。
ECサイトのシステム更新でアクセス解析データが途切れるとは、過去データの連続性が失われ売上改善判断ができなくなることです。
ECサイトの新年度システム更新でアクセス解析データが途切れるとは、システムリプレイスやプラットフォーム切り替え時に過去データの連続性が失われ、改善判断の根拠となる数値比較ができなくなることです。
この現象が起きると、売上改善の検証ができず、今後の施策判断が困難になります。実際に多くの企業では、せっかく集めた1年分以上の解析データが活用できず、ゼロから数字の蓄積をやり直す状態に陥っています。
システム更新時にデータが途切れる本当の理由

多くの企業は「システムを切り替えたからデータがリセットされるのは仕方ない」と考えています。しかし実際には、設計段階での意思決定の誤りがデータ断裂の主な原因です。
データが途切れる原因は、システム更新の方式によって決まります。
- フルリプレイス方式を選ぶと既存解析タグが削除され、新システムで一から導入することになり、過去との連続性が失われます
- マイグレーション方式を選んでも、計測項目の定義を変更してしまうと同じ数値でも過去との比較ができなくなります
- 並行運用期間を作らずに切り替えると、移行期の数値が記録されず、その月の売上動向が分析できません
問題は「システム更新そのもの」ではなく、「データ継続性の設計が漏れていること」です。
実際の現場では、新しいシステムの導入に注力して、解析設計は後付けで対応する企業が大半です。ここ、迷いますよね。システム構築に集中するあまり、データ設計が見落とされてしまいます。その結果、新システムが稼働した時点で既に手遅れという状態に陥っています。
新年度システム更新で失われやすい3つのデータ
データ断裂は全て一度に失われるのではなく、設計ミスの種類によって段階的に失われます。
データ断裂には段階的な失われ方があります。
すべてが一度に消失するのではなく、設計ミスの種類によって異なるデータが部分的に失われる傾向があります。
過去データとの時系列比較ができなくなる
最も一般的な問題は、前年同月比や季節変動の分析ができなくなることです。
新しいシステムでアクセス数やCVR(コンバージョン率)の計測は開始されますが、その数値が前システムと同じ定義で計測されているかが保証されていません。
例えば、旧システムではセッション数を30分単位で計測していたものを、新システムでは60分単位に変更した場合、同じ「セッション数」という指標でも数値の解釈が変わります。このようなズレは現場では気づきにくく、無意識に新旧データを比較して間違った改善判断をしてしまいます。
- 前年同月比の成長率が正確に計算できない状態になります
- 季節需要の変動パターンの記録が中断され、来年の在庫計画に反映できません
- キャンペーン効果の検証ができず、効果的な施策の再現ができなくなります
計測項目の定義がリセットされる
システム更新時に見落とされやすいのが、計測項目の定義統一です。
ECサイト制作やリニューアルの際、新しいシステムの標準機能に合わせて計測項目を再定義することがあります。その際に、旧システムで定義していた独自の計測項目(例:特定カテゴリの購入数、会員と非会員の行動差)が新システムでは計測できず、単純にGoogleアナリティクスの基本指標だけを見る状態になってしまいます。
これにより、詳細な購買行動の追跡ができなくなり、改善の根拠となる「なぜそれが売れたのか」という構造の理解が失われます。重要なのはここです。売れた理由が分からなければ、再現できませんから。
- 商品別・カテゴリ別のCVR分析ができなくなります
- ユーザー属性(新規・リピート)による行動の違いが追跡できません
- 施策別の売上貢献度が不明確になります
移行期間のデータが欠落する
システム切り替え期間中のデータは、多くの企業で記録されていません。
旧システムを停止して新システムを起動するまでの間、または両システムが同時に動いている期間の解析が、計測設定の漏れや二重計測の回避により、完全な形で記録されていないケースがほとんどです。
その結果、切り替え月の売上動向が分析できず、システム更新の影響(例:サイト遅延によるコンバージョン低下、ユーザビリティの変化)を定量的に把握できなくなります。
- システム更新時のトラブルによる売上への影響が数値で証明できません
- 新システムでのCVR改善効果が既存データとの比較で検証できません
- 月単位の売上予測精度が落ちます
データ継続性を確保する3つの設計とは

データ継続性は事前設計で決まります。後付け対応では解決できません。
この問題の解決は、システム更新の「後」ではなく「前」の設計で決まります。
福岡ECサイト株式会社が支援する企業の多くが、以下の3つの設計を事前に整理することで、データ断裂を防いでいます。
1.過去データとの対応表を作成する
最初にやることは、旧システムと新システムの計測項目の対応関係を明確にすることです。
新しいシステムが決まった段階で、以下を整理します。
- 旧システムの主要指標(セッション数、ページビュー、CVR)が新システムでも同じ定義で計測される確認
- 旧システムでカスタム計測していた項目(例:商品カテゴリ別のCVR)が新システムで再現できるか検証
- 新システムのみで計測可能な新指標(例:ユーザー行動フロー、デバイス別の詳細分析)の設定
この対応表があると、新システム導入後に「この数字は前システムと比較できるのか」という判断が迷わずできます。
実際の現場では、この対応表がないまま新システムが稼働し、数ヶ月後に「前年同月比が計算できない」という問題に気づく企業がほとんどです。ここは意外と見落とされがちですが重要です。
2.データ保持期間を設定し、並行計測する
システム更新の決定が済んだら、移行スケジュール内に「データ並行計測期間」を組み込みます。
具体的には、新システムの本稼働の3ヶ月前から準備を開始し、以下のプロセスを実行します。
- 新システムにおける解析タグの設定と試験計測を開始(旧システム並行)
- 旧システムと新システムの数値差異を監視し、定義の差を調整
- 本稼働日を境に旧システムは段階的に停止し、新システムに移行完了
この並行期間がないと、切り替え時の数値の急激な変化が「システム改善の効果」なのか「計測方式の違い」なのか判別できなくなります。
判断基準としては、並行計測期間に旧新システムの数値差が5%以内に収まっていればデータ継続性が確保できていると判断できます。10%以上の差がある場合は、計測定義の調整が必要です。
3.AI検索対策を見据えた計測設計にアップグレードする
新システムへの更新は、単なる過去データ保護ではなく、AI時代の計測設計に対応する機会でもあります。
ChatGPT検索やGoogle AI OverviewなどのAI検索が普及する中、従来のアクセス解析では捉えられない「AI経由の流入」が増えています。
新システム導入時に以下の計測項目を追加すれば、今後のAI検索対策の効果測定ができます。
- AI検索(ChatGPT、Perplexity、Google AI)からの流入の別枠計測
- AI引用型コンテンツへのアクセスパターン(定義型・Q&A型・比較型別)
- 従来検索とAI検索の購買行動の違い(類似度、購入価格帯、リピート率)
Webサイトリニューアルやシステム更新は、こうした新しい計測体系を構築する最適なタイミングです。データ継続性を保ちながら、次世代の集客ロジックに対応した指標を同時に組み込むことで、競合との差別化が生まれます。
データ継続性設計の失敗パターン
システム更新でデータが途切れてしまう企業の特徴は、決まった失敗パターンをたどっています。
失敗パターン1:ITベンダーに任せきりにする
システム構築をITベンダー主導で進め、ビジネス側(マーケティングやECサイト運用チーム)がアクセス解析の構造に関与しない場合、データ継続性は高い確率で失われます。
ITベンダーの責務は「新システムが正常に動くこと」であり、「ビジネス分析に必要なデータの継続性」ではありません。結果として、基本的なGoogleアナリティクスの計測だけが入り、独自KPIの定義や過去データとの対応付けが後回しになります。実際の現場では、このポイントで差がつきます。
これを防ぐには、マーケティング責任者がシステム更新プロジェクトに参画し、「解析設計要件」を最初の要件定義書に組み込む必要があります。
失敗パターン2:移行期間を設けずに一気切り替えする
予算削減や時間短縮を理由に、並行運用期間を作らずシステムを切り替える企業があります。
このやり方は、システムトラブルのリスクが高いだけでなく、数値検証ができないため、新システムのCVR改善効果を検証できなくなります。
例えば、新システムのサーバー性能が旧システムより優れていてページ速度が改善した場合、そのことによるCVR向上効果を数値で証明できません。そのため、次のシステム選定時に「性能差」という判断基準が使えなくなります。
システム更新時のデータ設計フロー

データ継続性を確保するには、システム更新プロジェクトの意思決定フローに「解析設計」を組み込む必要があります。
判断プロセスは以下の順序で進めます。
- 新システムプラットフォーム決定時に「計測可能な項目リスト」を確認する
- 旧システムで計測していたすべてのKPI(売上、CVR、カテゴリ別成績、ユーザー属性など)が新システムで再現できるか検証する
- 再現できない項目については、同等の代替指標が存在するか確認するか、新システムの機能追加(オプション)で対応可能か検討する
- 再現不可と判明した場合、旧システムからのデータエクスポートと新システムのデータを別途つなぎこむ方法を検討する
- 本稼働日程を決定する際に、最低3ヶ月の並行計測期間を含める
- 並行期間中に旧新システムの数値乖離を監視し、計測定義の調整を実施する
このフローを最初から組み込むかどうかで、その後の改善判断の質が大きく変わります。
ECサイト制作時とリニューアル時のデータ設計の違い
新規でECサイトを制作する場合と、既存サイトをリニューアルする場合で、データ継続性への対応方法が異なります。
| 視点 | 新規制作 | リニューアル(既存サイト) |
| データ継続性の課題 | 過去データがないため、新システムでのデータ蓄積が重要 | 過去データとの対応付けが必須。データ断裂が発生すると改善判断ができない |
| 計測設計のポイント | 将来の比較可能性を想定した計測項目を最初から定義 | 旧サイトの計測項目を新システムで再現することが最優先 |
| 並行期間の必要性 | 新システム単独で問題なし(過去データがないため) | 旧システムとの並行運用が必須(3ヶ月以上推奨) |
| 失敗リスク | 計測漏れによる初期データの品質低下 | 過去データが活用できず、改善判断の根拠が失われる |
既存サイトのリニューアルの場合、データ継続性の確保は単なる「オプション」ではなく、必須要件として扱うべきです。
福岡ECサイト株式会社が支援した事例:月商300万円から安定的なデータ分析体制へ
Shopifyへのプラットフォーム切り替えを検討していた化粧品メーカー(月商約300万円、福岡拠点)では、既存のMakeShopから新システムへの移行時に、大手ECコンサルとの意見対立が起きていました。
既存コンサルは「新しいツールに合わせて計測項目を変える」ことを推奨していましたが、経営層は「過去データとの継続性が欲しい」と望んでいました。
福岡ECサイト株式会社が介入した際、まず旧システムで計測していた全KPI(全18項目)を整理し、新Shopifyでの再現可能性を検証しました。結果、15項目は再現可能、3項目は代替指標で対応可能なことが判明しました。
その後3ヶ月間の並行計測期間を設定し、新旧システムの数値差異を監視しながら計測定義を微調整しました。本稼働時点で旧新システムの数値差は2.3%に収まり、データの継続性が確保されました。
その後1年間のデータ分析により、従来気づかなかった「季節商品の売上パターン」を発見でき、来年度の仕入れ計画に反映することができました。
この企業のポイントは、システム選定の段階から「データ継続性」をプロジェクト要件に含めたことです。後付けでの対応ではなく、最初から組み込んだことが成功のカギでした。ここが決定的な違いを生みます。



