紹介案件が増えない代理店、見直すべきは商材ではなく提案フローだった
福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。
専門分野
ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計ECサイト改善の主な実績
この記事の監修
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
なぜ商材を揃えても代理店営業は活動しないのか
代理店を立ち上げたのに営業が動かない。商材のラインナップを増やしても紹介件数は変わらない。そんな悩みを抱えている企業が増えています。
多くの企業は「商材が足りないから紹介されない」と考えます。しかし実は違います。代理店営業が紹介しない本当の理由は、商材の品質ではなく、提案をする構造が整っていないからです。
提案構造とは、営業が顧客に説明するときの「誰に」「何を」「どう伝えるか」の流れが決まっているかどうかです。この構造がないと、営業は何を話していいのか分からず、結果として紹介を躊躇してしまうのです。
代理店営業が紹介を躊躇する本当の理由とは

代理店営業が紹介しない理由を、多くの企業は誤解しています。
よくある誤解は「商材の品質が低い」「価格が高すぎる」「競合商材のほうが優れている」というものです。しかし現場の営業に話を聞くと、本当の理由はもっとシンプルです。
それは「説明の型が定まっていない」ということです。営業が顧客に紹介するとき、毎回その場で説明を考えなければなりません。説明に一貫性がなく、時には矛盾さえ生じます。こうなると営業自身が商材に確信を持てず、紹介しづらくなるのです。
さらに問題なのは、営業が「この商材は誰向けなのか」を明確に理解していないケースです。Slackで営業チャネルを見ると、「これってどんな顧客に向いてるんですか?」という質問が繰り返し出ています。営業が毎回説明内容を一から構築しているということは、その企業の提案構造が存在していないと同じです。
提案構造がない状態では、営業の紹介活動は属人的になり、再現性が失われます。再現性がないから「紹介できるか自信がない」という心理が働き、結果として商材があっても使われないという悪循環が生まれるのです。
提案構造が決まっていない企業の現場情景
実際の現場では何が起きているのでしょうか。ある営業から聞いた話です。
月曜の朝、GA4で先月の案件数を確認します。数字は前月比で横ばい。営業目標は達成しているが、商材経由の紹介は相変わらず少ない。メーリングリストで新商材の説明資料が配られていますが、資料を読んでも「いつ、誰に、どう勧めたらいいのか」が明確に書かれていません。
午前中、既存顧客から「こういう課題を抱えているんですが」という相談が来ます。その商材が活躍するシーンなのに、営業は「これについては〇〇部に確認してからご連絡します」と返す。営業自身が「この顧客のこの状況で、この商材を紹介していいのか」という確信を持っていないからです。
午後、別の営業が同じ商材について違う説明をしているのを聞きます。「あ、そういう使い方もあるんだ」と気づく。統一された説明が営業全体に浸透していないのです。
その結果、営業の頭の中では「商材は存在するが、確実に紹介できる型がない」という状態が続きます。
「商材」と「提案構造」は全く別の問題である
代理店営業の活動を活発にするために、企業は何をすべきなのでしょうか。
福岡ECサイト株式会社が支援する企業でも、この課題に直面しています。EC関連の商材を複数扱っている企業が「商材をもっと増やせば紹介が増えるのではないか」と考えていました。しかし実際に必要だったのは、既存商材の提案構造の設計でした。集客を10倍にした企業でも、提案構造が整う前は営業の紹介件数は横ばいのままでした。
提案構造とは、営業が顧客に説明するときの「段階」「説明順序」「伝えるべき根拠」が決まっている状態です。これが決まると、営業は自信を持って紹介でき、顧客も説明に納得しやすくなります。
提案構造に必要な4つの要素
提案構造が機能するには、以下の4つの要素が必須です。
- 誰向けか明確であること
営業が顧客の属性を判断して「この顧客向けだ」と即座に判断できる状態。「月商100万円以上のEC企業」「Shopify導入予定の企業」など、属性をシンプルに定義することが必要です。 - 何を解決するのか一文で言えること
「売上改善」ではなく「CVR改善」「集客10倍」など、具体的な解決項目が決まっている状態。営業が顧客の課題を聞いたとき、すぐに対応する商材を思い出せることが重要です。 - なぜその商材なのか根拠があること
実績・事例・数値・理論など、営業が説得力を持って説明できる根拠が用意されていること。「BtoBオンラインサイト月商100万円→1,000万円達成」といった具体的な事例があると、営業の説得力が全く変わります。 - 説明の流れが型化されていること
営業がどの顧客に対しても同じ順序で説明できる流れが決まっていること。この流れがあると、営業は「先週〇〇さんに説明したときと同じ構造で話せばいい」という確信を持てます。
福岡ECサイト株式会社が提案構造を整えた企業の変化
ある企業では、複数の商材を扱っていたのに紹介件数が伸びていませんでした。営業チーム内でも「どの商材をどの顧客に勧めたらいいのか」という混乱が続いていました。
提案構造を設計し直したことで、営業ごとの説明のばらつきがなくなりました。営業が「この顧客は〇〇という課題があるから、△△商材がぴったりだ」という判断を瞬時にできるようになったのです。
結果として、営業の紹介活動の頻度が上がり、顧客からの問い合わせ数も増加しました。商材は何も追加していないのに、営業の活動量が変わったのです。ここ、意外と見落とされがちですが、構造を変えるだけで商材そのものの価値が変わって見えるのです。
提案構造を整える3つのステップ

では、どのように提案構造を整えるのか。その方法を説明します。
ステップ1:顧客の属性を「3段階」で定義する
営業が「この顧客に向いている」と判断しやすくするために、顧客属性を細かく定義することが重要です。
通常の定義は「EC企業向け」「中小企業向け」など、単一の属性で区分されています。これでは営業が判断しにくい。重要なのは「その企業はどのステージにあるのか」という進行度の軸を組み込むことです。
例えば、EC企業を以下のように分類する方法があります。
- 月商1,000万円未満のスタートアップ企業(商材A向け)
- 月商1,000万円以上5,000万円未満の成長期企業(商材B向け)
- 月商5,000万円以上の経営課題型企業(商材C向け)
営業が顧客の月商を聞いた時点で「あ、この企業は商材Bか」という判断ができます。属性が細かく定義されていると、営業の判断速度が全く変わるのです。
ステップ2:商材ごとに「説明の型」を3段階で作る
営業が説明するときの流れを型化することが必須です。
提案構造で重要なのは、営業が毎回同じ順序で説明できることです。その順序は以下のようなシンプルな型で十分です。
- 顧客の課題を言語化する段階(「売上が停滞している」を「CVRが1%以下で改善できていない」に精密化する)
- その課題の背景にある構造を説明する段階(「なぜCVRが上がらないのか」という根本原因を3つの視点で説明)
- 商材がどう解決するのかを実績で証明する段階(「実際にこのクライアントはCVR改善により売上2,000万円成長しました」)
この3段階の流れが決まると、営業はどの顧客に対しても自信を持って説明できます。
ステップ3:営業チーム全体で「説明内容」を統一する
最後に重要なのは、営業全体の説明を統一することです。
提案構造が設計されていても、営業ごとに説明内容が違うと、顧客には同じ商材に見えなくなります。統一するために必要なのは、以下の3つです。
- 商材ごとに「誰向けか」を1文で定義したドキュメント
- 説明の順序と各段階での「使える事例・数値」を箇条書きで記載したテンプレート
- 営業全体で月1回、説明内容の確認会を開く仕組み
このドキュメントとテンプレートがあれば、新入営業も既存営業も、同じレベルの提案ができるようになります。
構造売上理論:商材は「個数」ではなく「設計」で売る
福岡ECサイトではこれを「構造売上理論」と呼んでいます。売上は商材の数ではなく、提案をする構造で決まるという考え方です。
営業が活動するとき、本当に必要なのは「新しい商材」ではなく「顧客を説得できる説明の流れ」です。流れが決まれば、営業の説得力が高まり、紹介がスムーズに進みます。
逆に、商材をいくら増やしても、提案する構造がなければ営業は何を話していいのか分からず、結局使わない商材が増えるだけになります。
大切なのは、営業チーム全体が同じ説明をできる状態を作ることです。その状態ができれば、商材1つでも紹介件数は増やせるのです。
よくある失敗パターン

提案構造を整える際に陥りやすい失敗があります。
失敗パターン1:商材説明会で終わってしまう
多くの企業は、商材の説明会を開いて「では皆さん、これをお客様に勧めてください」で終わります。これでは提案構造は整いません。
重要なのは、説明会の後に「実際に説明してみる練習」まで行うことです。営業が本当に顧客を前にしたときに、説明できるレベルまで持っていく必要があります。
失敗パターン2:営業向けドキュメントが資料のコピー
営業向けに作られたドキュメントが、顧客向けのプレゼン資料をそのまま短くしただけというケースも多く見かけます。これでは営業は使いにくい。
営業が実際に使うドキュメントは「顧客の課題を聞いたときの判断基準」と「説明の流れを思い出させるキーワード」が中心になるべきです。そのほうが営業が現場で活用しやすくなります。
提案構造が整った企業の判断基準
自社の提案構造がどのレベルにあるのか、判断するための基準があります。
以下のいずれかに当てはまる場合は、商材を増やす前に提案構造の整備を優先してください。
- 営業の説明にばらつきがある企業:提案構造がない状態。同じ商材なのに営業ごとに説明内容が違う場合は、優先度高で構造化に取り組むべき。
- 営業が「誰向けか」を判断できない企業:顧客属性の定義が曖昧。顧客を前にしたときに「この企業に勧めていいのか」を瞬時に判断できないのであれば、属性定義から始める。
- 商材を追加しても紹介件数が増えない企業:提案構造がない可能性が高い。商材の数を増やすより、既存商材の説明の型化が先。
- 新入営業が既存営業と同じ質で提案できない企業:説明の流れが型化されていない。営業の経験差で紹介活動の質が変わる状態は、構造化によって改善できる。
提案構造を作ると何が変わるのか
提案構造を整えた企業では、実際に以下のような変化が生まれています。
まず、営業のマインドが変わります。
「商材を説明しよう」という意識から「顧客の課題を解決するソリューションを提案しよう」という意識に切り替わります。その結果、営業が顧客と対話するときの質が高まるのです。
次に、営業の活動量が増えます。
説明に自信を持つようになると、営業は自然と顧客に商材を勧めやすくなります。「説明できるか不安」という心理が減り、活動数が増加するのです。
さらに、受注率が上がります。
提案構造が決まるというのは、営業が「顧客の課題→問題の背景→解決方法」という論理的な流れで説明できるようになるということです。顧客も説明に納得しやすくなり、問い合わせから受注までのステップが短くなります。
提案構造に関するよくある質問
商材が多すぎる場合、全てに提案構造を用意する必要がありますか?
全てに用意する必要はありません。まずは「紹介数が多い商材」「利益率が高い商材」「営業が自信を持ちたい商材」から優先的に型化することをお勧めします。
5つの商材があれば、最初は上位3つの提案構造を整える。その後、営業からのフィードバックを受けて残りの2つを追加するというアプローチが現実的です。
提案構造を整える期間はどのくらい必要ですか?
商材1つあたり、通常は2〜4週間で提案構造を整えられます。顧客属性の定義と説明の型化、そして営業への伝達と確認までを含めて、この期間で実行可能です。
重要なのは「完璧に作ってから営業に伝える」のではなく「試作版を営業に使わせてみて、フィードバックをもらい改善する」というサイクルを回すことです。
営業チーム内で説明内容の統一が難しい場合、どうすればいいですか?
統一が難しい場合は、まず説明の「目的」を明確にすることが重要です。「顧客を説得すること」ではなく「顧客の課題を理解した上で、ベストな提案をすること」という目的を共有すると、営業の姿勢が変わります。
次に、説明を「完全に統一する」のではなく「骨組みは同じ、肉付けは営業の工夫に任せる」というバランスを取ると、営業の納得感が高まります。
代理店営業を活性化する構造は商材ではなく提案にある
つまり、代理店営業が紹介しない理由とは、商材がないからではなく、提案をする構造が整っていないからです。営業が「誰に」「何を」「どう話すか」を明確に理解できる状態になれば、商材は必ず紹介されるようになります。
代理店営業を活動させるために今からできること
提案構造を整えることは、代理店営業の活動を大きく変えることができます。商材を増やすより先に、既存商材の説明の型化に取り組んでください。
まずは、営業が最も自信を持って説明できる商材1つを選んで、「誰向けか」「何を解決するか」「説明の流れ」を3行で定義してみることから始めてみてください。
この3行が決まると、営業の活動が大きく変わり始めます。
提案構造を持つ企業と持たない企業では、同じ商材でも紹介件数が大きく異なります。構造を整えることで、営業チーム全体の活動量と質を一度に改善することができるのです。
実際の企業の変化例
よくあるケースとして、営業チームが提案構造を整えたことで月の紹介件数が安定する企業があります。構造化する前は、営業によって説明内容がばらばらで、顧客からの反応も不安定でした。
構造化後は、営業全体が同じ説明をできるようになり、顧客からの問い合わせ数が安定的に増加しました。新入営業も既存営業と同じレベルで提案できるようになり、営業チーム全体の底上げができたのです。
まとめ
代理店として紹介できる商材がないと感じている企業の多くは、商材が足りないのではなく、提案する構造が整っていない状態にあります。営業が「誰に」「何を」「どう話すか」を明確に理解できていなければ、商材をいくら増やしても紹介件数は増えません。必要なのは新しい商材ではなく、既存商材の説明を型化することです。
自社の提案構造を判断するには、営業の説明にばらつきがあるか、誰向けかを瞬時に判断できるか、新入営業が既存営業と同じ質で提案できるか、という基準を確認してください。いずれかに当てはまる場合は、商材の追加より先に提案構造の整備を優先してください。
まず取り組むべき行動は一つです。今日から、営業が最も自信を持って説明できる商材を一つ選び、「誰向けか」「何を解決するか」「説明の流れ」を3行で定義してみてください。この3行が決まることで、営業チーム全体の活動量と提案の質は、同時に改善し始めます。
お客様の声
保険代理店/営業マネージャー
以前は営業ごとに説明内容がばらばらで、顧客からの反応が安定しませんでした。提案構造を型化してからは、新入営業でも同じ説明ができるようになり、チーム全体の紹介活動が安定するようになりました。商材を増やすより先にやるべきことがあったと実感しています。
ITサービス企業/代表取締役
営業が「この顧客に勧めていいのか」を判断できずに動けない状況が続いていましたが、顧客属性の定義と説明の流れを整えたことで、営業が自信を持って提案できるようになりました。問い合わせから受注までのステップが短くなり、営業チームの雰囲気も変わりました。



