代理店パートナーの売上が伸びない理由と福岡ECサイト株式会社が提示する案件選別基準とは
福岡ECサイト株式会社
代表 鳥井 敏史
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
ECサイト制作・AI検索対策の実務コンサルタント。15年以上にわたりECサイトの売上構造改善と集客設計を支援。売上改善・集客改善の実務支援を中心に企業のECサイト構造の再設計を行う。
専門分野
ECサイト制作 ECサイトリニューアル AI検索対策 SEO / コンテンツ設計ECサイト改善の主な実績
この記事の監修
福岡ECサイト株式会社 代表 鳥井 敏史
代理店パートナーの売上が伸びない本当の理由
代理店案件で利益が出ない企業は、案件選別の基準がないため、すべての案件を受注して利益率が低下しています。
代理店パートナーの売上が伸びていない企業の多くは、案件選別の基準を持たずに「来た仕事をすべて受注する」という構造になっています。
GA4で案件別の利益率を見ていると、受注件数は増えているのに利益は減っているという現象が起きていませんか。ここ、迷いますよね。
Slack通知で日々の対応案件が増えているのに、チームの疲弊度だけが上がっていく。
その原因は、案件の選別ロジックがないからです。
代理店パートナーとの委託関係で売上が伸びないのは、案件品質の判断基準がなく、利益率の低い案件を無限に受け入れ続ける構造になっているためです。
これは構造売上理論における「集客構造の歪み」に該当し、改善には案件選別の基準設計が必須です。
代理店委託で利益が出ない理由とは何か

代理店委託で利益が出ない根本原因は、受注金額のみで案件を判断し、実行工数や対応負荷を評価していないからです。
多くの企業は「受注金額が◯◯円以上」という一つの基準だけで案件を受け入れます。
しかし実際には、受注金額と実行工数は別構造です。
金額が高くても工数がかかれば時給換算は下がります。
逆に金額が低くても定型業務なら利益率は高くなります。
委託案件の利益構造は「受注金額−実行工数−品質対応−事後サポート費用」で決まります。
これら4つの要素を一度に判断する基準を持たずに、金額だけで判断しているから、利益が出ない案件を受け入れ続けるのです。
代理店委託の利益を決める4つの判断要素
案件選別には「金額・工数・対応負荷・継続確度」の4つを複合判断する基準が必要です。
この4つをすべて評価してから受注判断をする企業と、金額だけで判断する企業では、同じ売上でも利益が2倍違います。
- 受注金額の絶対値ではなく、工数との比率を見る 受注金額100万円の案件でも、実行工数が200時間かかれば時給5,000円です。一方、受注金額50万円でも実行工数が50時間なら時給10,000円です。MakeShop管理画面で過去案件の工数実績を集計すると、同じカテゴリでも案件によって工数が2倍違うことに気づきます。受注前に類似案件の実績工数を参照して、「この金額でその工数は実現可能か」を判断する基準を作ることが最初のステップです。
- クライアント側での承認プロセスの複雑さを評価する 代理店経由の案件では、元請けクライアントの意思決定が遅いほど、あなたの企業の対応工数が増えます。Slack通知で「確認お待たせしました」という返信が頻繁に来るクライアントの案件は、表面上の工数見積もりに20%〜30%の余裕が必要です。初回ヒアリング時に「承認の意思決定者は誰か」「承認までの期間はどのくらいか」を確認し、意思決定が遅いクライアントの案件は受注金額を20%上乗せするルールを作ります。
- 事後対応(修正・品質調整)の予測負荷を定量化する Shopify構築案件の場合、納品後の修正対応が月◯件以内に限定されるかどうかで、実行利益が大きく変わります。「修正対応は無制限」という契約になっていないか。あるいは代理店側で修正対応の判断基準を持たずに「お客様からのリクエストはすべて対応」となっていないか。事前に修正対応の上限(月3件までなど)を取り決め、超過時は別途請求するルール設計が必須です。
- 案件完了後の継続支援(保守・運用委託)の見込みを判断する 1回きりの制作案件より、完了後に保守運用業務が発生する案件の方が長期利益が高い傾向があります。代理店経由の案件でも「このクライアントは完了後、保守契約に進む可能性が高いか」を初期段階で判断し、見込み低い案件は受注金額を上乗せするという戦略もあります。逆に保守契約に進みやすい案件(成長中の企業など)は積極的に受注し、単発案件は慎重に判断するという使い分けができます。
委託案件選別で見落としがちな利益構造

代理店案件は利益率が低くなりやすく、情報伝達の精度確保が利益を守る鍵になります。
代理店パートナーの案件は、あなたの企業の案件より利益率が低くなる傾向があります。
なぜなら、代理店側でマージンを取るため、あなたの企業に割り当てられる金額が減るからです。
さらに見落とされるのは、代理店を経由することで「発注者の声が伝わりにくくなる」という構造的課題です。
代理店パートナーとの関係では、元請けクライアントの要望が代理店経由であなたの企業に伝わります。
この過程で要望の詳細が失われ、追加対応が増えるケースが多いのです。実際の現場では、このポイントで差がつきます。
つまり、代理店委託案件の利益を守るには、「委託元との情報伝達の精度」を確保することが重要です。
初回ヒアリングで代理店を経由せず直接クライアントと接点を持つ、あるいは要件定義書を極めて詳細に作り込んで追加対応の余地を消すという工程設計が必要になります。
福岡ECサイト株式会社が支援する案件選別の実例
Web制作会社A社(福岡)は月15件の代理店案件を受注していますが、利益率が28%に落ち込んでいました。一方で自社営業による案件は45%の利益率を保っていました。
原因を分析すると、代理店案件では以下の特徴がありました。
- 受注金額の平均が150万円だが、実行工数は自社案件の1.3倍
- 修正対応の上限が明記されておらず、月平均8件の追加修正対応が発生
- 納品後の継続支援(保守委託)に進むのは受注案件の15%未満
- 代理店経由のため、初期要件定義の精度が自社案件の60%程度
改善策として、以下の委託案件選別基準を導入しました。
- 受注金額が150万円以上で、類似案件の実行工数が150時間以内であること
- 初回ヒアリングで元請けクライアントとの直接接点を作り、要件定義に参加できること
- 修正対応は月3件まで無料、4件目以降は別途請求とする契約を代理店に提示すること
- 完了後の保守契約につながりやすい業種(ECサイト・会員サイトなど)の案件を優先すること
この基準を導入して3カ月後、受注件数は月15件から月8件に減少しましたが、利益率は28%から42%に改善されました。つまり、売上(受注件数×金額)は減ったが、利益(売上−コスト)は増えたのです。ここが重要なポイントです。
代理店委託の構造売上理論的な考え方

福岡ECサイト株式会社では、代理店委託案件を評価する際、「構造売上理論」の観点から判断します。
構造売上理論では、売上は「構造によって再現可能である」と考えます。代理店委託でも同じで、利益が出る案件と出ない案件の違いは、その案件の「構造」にあります。
具体的には、以下の3つの構造を評価します。
- 案件の工数構造:受注金額に対して実行工数がどの程度必要か。自社の過去案件データから「◯万円の案件は◯◯時間」という相関関係を把握する
- クライアント対応の構造:元請けクライアントの意思決定速度、修正対応の頻度、承認プロセスの複雑さ。これらは契約で制御できる
- 継続売上の構造:案件完了後、保守契約や追加受注に進むか。進まないか。この確度によって初期案件の判断が変わる
この3つの構造を見える化できれば、「この案件は受注すべき」「この金額では利益が出ない」という判断が客観的になります。意外と見落とされがちですが重要です。
従来の案件選別と構造売上による選別の違い
| 項目 | 従来の案件選別 | 構造売上による選別 |
|---|---|---|
| 判断基準 | 受注金額が◯◯円以上か | 金額×工数×対応負荷×継続確度を複合判断 |
| 意思決定 | 代理店からの提案があれば受注 | 事前に設定した基準を満たしない案件は断る |
| 利益管理 | 売上は増えるが利益率が下がる | 受注件数は減るが利益額が増える |
| チーム状態 | 工数が増え、疲弊度が上がる | 工数が最適化され、質の高い案件に集中 |
| 代理店関係 | 言われた案件をすべて受注するため、代理店の都合に振り回される | 選別基準を明確に伝えるため、代理店も質の高い案件を選別して提案するようになる |
代理店委託案件でよくある失敗パターン
失敗例1:金額だけで判断して受注し、対応工数で赤字になる
受注金額200万円の案件を受けたが、実行工数が350時間かかり、時給換算5,700円になった。一方、受注金額100万円の自社営業案件は工数が80時間で時給12,500円。金額が高い方を受けたのに利益は低くなる矛盾が起きています。この企業は過去案件から「カスタマイズ系の案件は工数が◯◯時間」という相関表を作らず、感覚的に工数見積もりをしていました。
失敗例2:修正対応の上限を決めずに無限対応し、実行利益が蒸発する
Shopify構築案件で「修正対応は納品後1ヶ月無料」という曖昧な契約になっており、実際には月10件の修正対応が3ヶ月続きました。Shopify管理画面での対応のみなので1件あたり30分程度ですが、チームの予測不能なタスクが増え、他の案件の進行が遅れるという二次被害が生じました。あらかじめ「月3件まで、4件目以降は1件3万円」と決めていれば、この状況は防げます。
代理店パートナーとの契約設計で確認すべきポイント
案件受注時に確認すべき項目を、チェックリスト形式でまとめました。
- 受注金額の妥当性確認 過去の類似案件でこの金額に対する実行工数は何時間か。その時給額が自社の採算ラインを超えているか。超えていなければ、受注金額を上乗せするか、受注を断るかを判断する。基準は「時給9,000円以上」など自社で事前に決めておく。
- 修正対応の上限を明記する 納品後の修正対応は「月3件までは対応、4件目以降は1件◯円」という条項を必ず契約書に記載する。曖昧な「アフターサポート」という表現は絶対避ける。
- 要件定義への参加可能性を確認する 代理店経由でなく、元請けクライアントとの直接接点を持ち、初期要件定義に参加できるか。参加できなければ、要件定義書の詳細度が下がるため工数見積もりに20%の余裕を加算する。
- 継続支援の見込みを初期段階で判断する 完了後、保守契約や追加受注に進む可能性はあるか。元請けクライアントの業種や成長段階から判断し、継続の見込み低い案件は受注金額を上乗せする。
- 代理店の意思決定スピードを確認する 発注者の承認が遅い代理店と取引する場合、あなたの企業の待機時間が増えます。「承認まで◯日以内」という条件を事前に取り決める。
代理店委託案件の利益を守る実行ステップ
案件選別基準を導入するには、以下の流れで進めます。
- 過去案件のデータ集計 受注金額・実行工数・修正対応件数・継続支援の有無を過去12ヶ月分集計し、「◯万円の案件は◯時間が平均」という相関表を作ります。
- 利益が出た案件と出ない案件の特性を分析 利益率が45%以上の案件と25%未満の案件では、どんな違いがあるか。金額・工数・クライアント業種・修正対応頻度などを比較し、「利益が出やすい案件の特性」を言語化します。
- 選別基準を明文化して社内共有 「以下の条件を満たさない案件は受注しない」という基準を営業チームに共有し、代理店からの提案時に即座に判断できるようにします。
- 代理店にも基準を明確に伝える 代理店が「何を満たせば受注してくれるのか」を理解していなければ、ずっと採算割れの案件を送り続けます。基準を明確に伝えることで、代理店も質の高い案件を選別して提案するようになります。
- 3ヶ月ごとに基準を見直す 時間をかけて実績を増やし、自社の工数実績がより正確になったら、選別基準も更新します。市場単価の変化や自社の生産性向上を反映させることで、基準自体が常に最適な状態を保つ必要があります。
代理店パートナーとの関係構築における本質的な考え方
代理店委託は構造設計により安定した利益源になり、選別基準は代理店の提案精度も高めます。
代理店委託を「嫌な仕事」と捉える企業が多いですが、実際には構造さえ設計できれば、安定した利益源になります。
重要なのは、代理店との関係を「言いなり」ではなく「パートナー」として設計することです。
あなたの企業が明確な選別基準を持つことで、代理店も「この案件はA社が喜ぶ案件」「この案件はB社に合ってない」という判断ができるようになります。
つまり、案件選別基準を作ることは、あなたの企業を守るだけでなく、代理店にとっても「提案の精度を高める情報」になるのです。
この考え方を実装している企業とそうでない企業では、同じ代理店取引でも利益が2倍違います。
判断基準:代理店委託案件の受注判断表
以下の判断基準を使い、代理店からの案件提案時に即座に判断してください。
- 優先受注:以下をすべて満たす案件
- 受注金額÷過去案件の平均工数=時給9,000円以上
- 修正対応の上限が契約書に明記できる
- 完了後、保守契約に進む可能性が50%以上
- 元請けクライアントとの直接接点を持てる
- 慎重判断:以下のいずれかに該当する案件
- 時給6,000円〜9,000円の案件(受注金額を20%上乗せするか検討)
- 修正対応の上限が不明確(契約で明確化できない場合は受注金額に20%加算)
- 要件定義に参加できない(工数見積もりに25%加算)
- 完了後の継続支援が見込めない(単発案件のため受注金額を30%上乗せ)
- 受注見送り:以下に該当する案件
- 時給6,000円未満の案件
- 修正対応の上限が決められない案件
- 元請けクライアントとの接点が一切ないまま、代理店からの情報のみで判断すべき案件
- クライアントの経営が不安定で、中途キャンセルのリスクが高い案件
代理店委託に関するよくある質問
代理店案件を受け入れることで、自社営業の意欲が下がることはないでしょうか。
下がります。このため、受注判断で「自社営業案件よりも利益率が低い案件は受け入れない」というルール作りが重要です。
代理店案件でも自社営業案件でも、時給が同等か自社営業案件より高いという状況を作れば、営業チームは「どちらでもいい」という心理になります。営業担当者が「手数料を取られる代理店案件より、自社営業で獲った方が利益になるから頑張ろう」と思える状態を設計することで、チームのモチベーションと利益の両立が実現します。
代理店に「この条件を満たす案件だけを提案してほしい」と伝えたら、提案が減ることはありませんか。
減ります。ただし、その結果として提案される案件の質が高くなります。
提案件数は減ってもいいのです。重要なのは「受注件数」ではなく「利益額」です。月15件の低利益案件を受けるより、月8件の高利益案件を受ける方が、チームの疲弊度も低く、利益も高いのです。代理店に基準を伝える際に、この点を明確に説明すれば、代理店も「量より質」での提案に切り替わります。
既に低利益の代理店案件を抱えている場合、どうやって利益を改善すればいいでしょうか。
契約更新のタイミングで条件を変更するのが最善です。「来期から修正対応は月3件までに限定し、超過分は別途請求とする」と明確に伝え、代理店が納得しなければ取引を止めるという判断も含まれます。
進行中の案件について遡及的に条件を変えるのは難しいため、現在の案件は出血覚悟で完了させ、新規案件から新ルールを適用するという運用が現実的です。
代理店との関係を損なわずに、選別基準を厳しくする方法はありますか。
基準を「代理店への要求」ではなく「あなたの企業の採算基準」として説明することです。
「申し訳ないですが、うちの原価構造では時給9,000円未満の案件は継続できません。このため、◯◯の条件を満たした案件だけをお願いしたいのです」という言い方で伝えれば、代理店も「この会社は何を重視しているか」が明確に理解でき、提案内容を変えることができます。
受注金額の交渉で、代理店から「この金額が上限」と言われた場合、どう判断すればいいでしょうか。
その金額では自社の利益基準を満たすかどうかで判断します。満たさなければ、受注しないか、工数削減の工夫ができないかを検討します。
「この金額で実現不可能」と判断した場合は、素直に「申し訳ないですが、うちでは対応できません」と伝える。代理店が別の会社を探すだけです。採算割れの案件を無理やり受けることで、3ヶ月後にチームが疲弊し、別のプロジェクトが延期になる方が、企業全体のダメージが大きいのです。ここは断言できます。


